経済発展目指し外国資本誘致
中国東北部・遼寧省南端に位置する港湾都市の大連は、国際物流拠点として名高い。
東北部の現状について説明役を担った日本国駐瀋陽総領事館の杉田雅彦首席領事は「ここ10年間をたどると日中関係は必ずしも平たんではなかったが、数年前から関係改善が進んできた感覚がある」という。
東北3省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)は、かつて満州と呼ばれていた地域だ。杉田首席領事は「心の奥底で、何らか日本に親近感を抱いている人も少なくない」と話す。遼寧省、とりわけ大連と瀋陽は日本と親交が深い。このため、中央政府から遼寧省が率先して日本との関係を深く築くよう指示が出ている。
東北3省は、石炭産業や農業分野などで中国の発展を支えてきた地域だが、計画経済から脱却できず、高度成長に乗り遅れたとされる。中国の国内総生産(GDP)成長率は6%台だが、遼寧省は5.7%、吉林省は4.5%、黒龍江省は4.7%。日本のGDPと比べると高いが、上海など南の地域とはまだ差がある。
中央政府は〝東北振興〟を強化している。2018年9月には習近平国家主席が東北3省を視察。6項目の要求を打ち出している。中でも重要としたのが、ビジネス環境の改善。南でビジネスを経験した人材を指導者に置いたり、先進地域とのビジネス協力を図る動きを進めている。
外国資本の誘致も積極的に展開。大連には経済技術開発区があり、加工輸出型の企業が多く進出している。ドイツのBMWは、瀋陽に新工場を建設中だ。杉田首席領事は「国内の製造・賃金コストが上昇しているため、ビジネスモデルとしての中国の優位性は薄れると思う」と懸念を示す一方で、「中国国内の需要をどうやって取り込むかが将来的な課題。加工だけでなく、さまざまな在り方の取引を考える時代になっている」と話す。
東北3省の中で、日系企業の進出が最も多いのは大連だ。18年末時点で1522社が、異国の地で挑戦を続けている。
設計会社の一寸房(本社・札幌)は18年12月、大連に子会社を設立した。建設部の久松隼人主任は「日本企業が多く、さまざまな情報が入るため、仕事がやりやすい」と話す。小規模物件の施工図作製といった日本からの仕事を担う。将来的には中国国内の仕事を引き受けることを視野に入れている。
(北海道建設新聞2019年11月12日付3面より)