オーダーメードスーツ事業開始
アパレル大手・オンワードホールディングスの中国子会社、樫山(大連)有限公司は4月、大連の経済技術開発区内で第2工場の稼働を開始した。
日本では、アパレル業界を取り巻く環境が厳しさを増している。百貨店での売り上げは減少傾向。同社は新たな挑戦をしようと、オーダーメードスーツ事業を始めた。ブランド名を「KASHIYAMA the Smart Tailor」とし、第2工場はオーダーメードスーツ専用の縫製工場となっている。
受注と運送に3日、製品仕上げに4日充て、最短1週間で顧客に高品質なスーツを届ける。主な販売対象地域は中国と日本、米国だ。

多くの生地と色見本の中から好みに合わせて注文する
大連はもともと縫製業が盛んなため、手先が器用で人材確保に困らないという利点がある。従業員は第1、第2工場合わせて約540人で、ほとんどが女性。労働環境や保険制度が充実し、10年以上勤務する人も多い。
初回はガイドショップで30分―1時間かけて採寸・打ち合わせをする。データは即日工場へ届き、熟練した職人の手作業とIoT技術などの組み合わせで最短納期を実現し、他社との差別化を図っている。
ロボットが生地のピッキングや裁断を担う。裁断したパーツは、工程を管理するためのRFID用のタグが付いた専用ハンガーにセットし、ラインで各工程へ自動で流れるため、服の状態が一目で分かる。
ウールの特性で、湿度が含まれると伸び縮みすることから、一定の状態を保つため空調設備に気を配っているという。
袖付け工程は時間を要することから、ミシンの台数を増やして対応。ポケットの位置やボタンの数などの印、着心地を左右する袖裏地などは職人が手作業で付けている。各工程には、青いTシャツを着たリーダーを置く。最終検査で着丈や袖丈に数ミリ単位の差が生じ、基準に達しない製品は再び製造現場に戻す徹底ぶりだ。
完成したスーツは、機械で圧縮パック梱包(こんぽう)。日本で開封すると、湿度を吸ってしわがなくなり、着られる状態になる。コンパクト化することで、運びやすさも向上する。
現在は1日当たり200着のオーダーを受けているが、2倍の400着を目標に掲げる。
スーツを着る風習は中国のビジネスマンの一部に限られるが、国際化で普及が見込める。富裕層がターゲットだ。日本のものへの信頼は厚く、一度着ると気に入って再注文する人もいるという。
生地により異なるが、価格は紳士スーツで3万―8万円程度と、中国のデパートで注文するのに比べ約半分。修理なども無償で請け負い、2回目以降の注文はインターネットで可能だ。
統括技術部の池畠良治部長は「中国にはオーダーメードスーツの文化がないため、今後広がりを見せることが期待できる」としている。
(北海道建設新聞2019年11月13日付3面より)