中国市場に挑む ~大連・瀋陽リポート~

 高層ビル・マンション群が立ち並び、至る所に建国70周年を祝う横断幕や国旗が掲げられている―。

 10月8日から12日まで北海道中小企業家同友会国際ビジネス研究会主催の中国経済視察研修に同行した。海外の投資や技術を受け入れながら、世界第2位の経済大国に発展を遂げた中国。その巨大市場に挑戦する日系企業と、成長続ける中国企業の現状を取材した。

(この連載は経済産業部の富樫茜が担当しました)

中国市場に挑む~大連・瀋陽リポート~(5)本道企業にビジネスチャンスも

2019年12月06日 14時00分

熱意や柔軟性が成功の鍵

 「中国企業は優れたサービスを提供しないと世界では生き残っていけない」。札幌市内の人材紹介・派遣会社で会長を務めたことがある国際ビジネス研究会の大谷聖二相談役幹事は、中国企業がさらに発展する上での課題をこう感じている。

 例えば、航空会社での客室乗務員のサービス対応には物足りなさが残る。「共産党政権下で、もとは国有企業ばかり。サービスという概念がなかったから、質の向上が進んでいない。日本並みになるには20―30年かかると思う」と話す。

 瀋陽市人民政府外事弁公室東北亜処の初●(ショキ、●=しめすへん[ネ]に[其])処長は「中国企業は、日本企業の仕事に対する姿勢や先進的な技術に興味がある。ただ、どうやってまねをするのか、交流の機会がないことに困っている」と明かす。1978年の改革開放政策開始当初と比べ、資金力を蓄えた中国企業は、さらなる成長のためのノウハウを欲している。

 初処長は「企業の声を聞くと、北海道の菓子や土産に興味があるようだ。瀋陽にはその土地を代表するような土産・記念品がなく、悩ましい」と現状を語る。

 焼き肉のたれや菓子、珍味といった北海道食品の中国輸出を事業の一つとするコンチネンタル貿易(本社・札幌)の本間良二社長は、中国映画のロケ地に北海道が選ばれていることなどを挙げ、「中国人は北海道に対して良いイメージを抱いている」と話す。食品は関税もあって2・5―3倍の値段で販売しているが、百貨店でフェアが開かれたり、スーパーに商品を常設で置いてもらえるなど、手応えを感じている。

 北海道の持つイメージを活用できることが道内企業の強みだと本間社長は分析する。特に菓子メーカーは、本州の老舗とは異なり、新しい物を生み出そうという研究心がある。

 本間社長は中国で成功する企業の特徴として①熱意があること②柔軟性があること―の2点を挙げる。

 金融機関の現地駐在員事務所や行政の現地事務所などを活用し、正確な情報収集に努めるほか、自ら現地視察に出向くことを勧める。行動するほど人脈が増え、ビジネスチャンス拡大が期待できる。全て迎合する必要はないが、現地の市場性を把握し、パッケージや数量、価格で努力できることが成功の鍵になる。

中国企業と本道企業の交流促進に期待を寄せる初処長(右)と本間社長

 建設業にも進出の可能性はある。日本国駐瀋陽総領事館の杉田雅彦首席領事は「中国では建物を『自分たちで建てたい』という気持ちが強いのと、さまざまな国内の制約から難しい」としつつ、「工法など道内中小企業の独自技術を知りたいという需要はあるはず」と期待感を示す。

 国際化の波を受け、経済・ビジネス面で変わりつつある中国。国内だけではなく、世界に目を向ける動きも加速していて、夢を抱き革新を続ける企業は多い。

 日本企業にとっては中国市場の広さや可能性、中国企業にとっては日本の先進的ノウハウがそれぞれ魅力に映っている。双方の思惑が一致して、つながることができれば互いのビジネスチャンスはさらに広がるはずだ。

(北海道建設新聞2019年11月18日付3面より)


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