水耕栽培と水産養殖を掛け合わせ生産性と環境配慮両立
北海道パレットリサイクルシステム(本社・深川、HPRS)は、閉校した深川市内の中学校を植物工場に利活用し、葉物野菜や苗の生産を始める。初出荷は来春を予定。12日に深川市と旧・市立多度志中の無償貸与で書面を交わした。事業化には地元の北空知信用金庫や大谷種苗が協力。水耕栽培と水産養殖を掛け合わせたアクアポニックスと呼ばれるシステムによって、将来的には魚の出荷も手掛けたい考えだ。
文部科学省の承認の下、2014年3月末で閉校した多度志中を使って、停電時でも操業可能な自家発電型(オフグリッド)の植物工場を稼働させる。当面はリーフレタスやラディッシュを日量400株ほど生産する計画だ。
アクアポニックスは、魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収するシステム。浄化された水は再び魚の水槽へ戻るため、生産性と環境配慮を両立できる。同社では研究を重ね安全性を確認しながら、将来は水産品の出荷も手掛ける考え。太陽光や風力など再生可能エネルギーのほか、機器から出る廃熱を利用したオフグリッドも特徴で、育てている植物や魚が停電時でも駄目にならない強みを持つ。
旧・多度志中[MAP↗]は1971年に落成し、敷地面積4万6236m²、延べ2251m²の広さ。うち教室棟と管理棟は水耕栽培施設に改修。体育館は水産養殖、グラウンドは太陽光と風力による発電、自転車置き場は機械類の整備センターとして活用する計画だ。
事業費は1億3000万円ほどを見込む。一部は北空知信金と日本政策金融公庫による、事業性評価に基づく協調融資から充てる。
北空知信金に採算性の検証や販路の開拓などを協力してもらい、事業化にたどり着いた。作った野菜は旭川や深川のスーパーで販売される予定。植物工場に適した育苗開発は、地元の大谷種苗にアドバイスしてもらう。建物の改修は光栄建設工業と寺岡工務(いずれも本社・深川)が担う。
植物工場の事業化を促進しようと、本社を苫小牧から深川に移した。北大ビジネス・スプリングに構えていた札幌研究所も、照明など校舎内の施設環境が似ているということで厚別区の札幌市エレクトロニクスセンターへ移転。3倍の広さとなり充実した研究体制の下、事業を進化させようと計画している。
深川は米やソバの生産で有名。HPRSの佐藤弘幸社長は「植物工場の葉物野菜が地域のさらなる目玉となり、町おこしにつながれば」と話す。転用する旧校舎は躯体や外装を大幅改造することなく小さな改修に努め、昔の趣が残るよう配慮する。「学校が残ることを喜ぶOBやOGの声を聞くのはうれしい」と笑顔を見せる。
佐藤社長は「台風や大雨などの自然災害が多発する中、安定生産に対する食のニーズは高まっている。オフグリッド型の植物工場の強みを生かし、高品質な野菜を常に提供したい」と話している。