札幌都心部のオフィス空室率がかつてないほど低下し、賃料やビルの売買価格ともに上昇が続いている。ホテルに関しては訪日外国人の増加を背景に投資が活発化し、至るところで建設現場が目に付く状況だ。JR札幌駅前周辺で北海道の顔となる大型再開発計画が進み始める中、今後のマーケットがどう動くのか不動産サービス大手のCBRE(本社・東京)の新保則利札幌支店長に聞いた。
―札幌市内のオフィス状況は。
テナント需要はコールセンターやIT企業の拡大から非常に強い需要がある。中でも、札幌市内に100カ所近くあるコールセンターは拡張意欲が強い。供給は少ない半面、オフィス需要は多いため、なかなか貸し出す部屋がない。さっぽろ創世スクエアのような新築ビルについては非常に高い賃料にもかかわらず、ほとんどの入居者が決まり、マーケットの賃料全体を押し上げた。上昇は来年、再来年も緩やかに続くと考えている。
オフィスビルの売買では、東京に続き地方都市で物件が高騰し始めている。投資家サイドとしては投資する意欲は高いものの買えてないという現状がある。
―ホテルについてはどうか。
札幌市内ではこれまで宿泊施設の不足が続いていたが、現在計画されているホテルが全て建つと必要客室数がいったん充足できる状態になると予測する。新規供給が需要を喚起するという側面もあるため、現時点では過剰な状態ではない。札幌でいい物件があれば出店したいという事業者は国内だけではなく、未進出の海外チェーンホテルも意欲を見せている。
ビジネスや観光客向けの宿泊特化型ホテルが多く、富裕層らが宿泊するラグジュアリーホテルは不足気味だ。今後、中島公園エリアではMICEと併設してヒルトンが進出する。MICE施設は札幌では少なく、立地が良いことから成立するだろう。札幌駅で広い敷地を確保する北5西1・西2エリアで大型再開発ビルが計画されているので、国際水準のホテルが入れば需要にマッチしていると思う。
―再開発で今後、札幌駅前に商業店舗が集中する。大通エリアへの影響は。
商業施設に行ったときに買い回りができるかが将来にわたって発展するポイントと考えている。札幌駅にあるステラプレイスやエスタにはそれが集中している。大通エリアは街として商業施設が点在しているので今は買い回りができるが、将来建て替えや再開発が進む過程でテナントが移動しなければならなくなった場合、需要をどれだけキープできるかが重要になってくる。商業地のセンターとして、世代層や店舗属性などの集客ターゲットを意識した街のコンセプトを作るといいのではないのか。
―東京五輪後の札幌の不動産投資をどう予測する。
世界各地の例を見ても五輪後に開催地へ来ないかと言えばそうではなく、むしろ観光客は増える傾向にある。インバウンド観光客の増加は継続すると予測され、空港の機能拡充や新幹線全線開通も観光需要拡大の鍵になる。
景気減退局面が危惧される一方、非常に低金利の状態が続いているので、キャッシュを持っている投資家や融資条件の良い企業は不動産で投資して新たな収益の柱にしようと意欲を持っている。不動産投資意欲は今後も続くとみている。(聞き手・武山 勝宣)
新保則利(しんぼ・のりとし)1976年11月千葉県出身。99年生駒商事(現CBRE)に入社。2016年に横浜支店長、19年4月から現職。
(北海道建設新聞2019年11月28日付2面より)