小樽港長期構想検討委員会が25日から、2016年8月以来、約3年ぶりに再開した。今回の港湾計画改定は、物流・観光・安全の強化が目的だが、観光面に目を向けると、世界的なクルーズ船観光の需要の高まりを受け、国内外の主要港で誘致合戦が活発化。小樽港でも大型クルーズ船が停泊する岸壁の整備が進むが、改定作業中断で旅客が使うふ頭用地の整備が思うように進まない状況が続いていた。今後の誘致合戦を有利に進めるためにも、これまでの遅れを取り戻せるような、充実した議論が求められている。
13年に訪日観光客数1000万人を達成後、18年には初の3000万人を突破するなど、好調なインバウンド観光。20年の東京オリンピック開催を控え、観光庁は訪日観光客数の4000万人達成を目標に掲げ、オールジャパン体制で各種施策を展開する。
中でも訪日クルーズ旅客数は顕著な伸びを示す。18年は244万6000人と、13年実績比で約14倍を記録した。急伸の要因は中国発のショートクルーズ。この需要を取り込もうと、全国の主要港湾がしのぎを削っているのが現状だ。
ショートクルーズは寄港地での滞在時間が短いことから、港と観光地が近いことを重要視する。その点、小樽港は小樽運河まで徒歩圏内で収まり、インバウンド観光の受け入れ体制も整い、市内ツアーを豊富にそろえる。北海道新幹線札幌延伸後は、仮称・新小樽駅を利用して札幌市や倶知安町への高速移動が可能となり、道央圏観光のハブ地としての利活用が期待される。
一方で、屋外仮設テントによる税関検査、倉庫群で形成される景観など、現状のホスピタリティーは高いとは言いがたい。CIQ(税関・出入国管理・検疫)手続きや観光案内の円滑化に寄与する国際旅客船ターミナルビル、観光気分を盛り上げる魅力的な親水空間などへと、早急な改善が求められている。
改定作業を前に、小樽市は埠頭再開発を念頭とした官民連絡会議を設置。既存上屋を改良するクルーズ船用旅客ターミナルの整備コンセプトなどをテーマに、関係団体との意見交換に入った。策定中の第7次総合計画や都市計画マスタープランでも、クルーズ船の受け入れ体制構築を明記するなど、まちづくりにおける重要な位置付けと定めている。
新たな港湾計画は21年度のスタートを予定する。道央圏の海の玄関口にふさわしい、小樽港の未来が描かれることを期待したい。(小田 真沙樹記者)
(北海道建設新聞2019年11月27日付1面・時評より)