「区域認定までの限られた期間で環境への適切な配慮を行うことは不可能であると判断した」。11月29日の道議会一般質問で、鈴木直道知事はカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を見送ると表明した。需要予測で苫小牧市のIR売上高は年間1562億円、税収効果は234億円を見込んでおり、本道の観光振興、地域振興の起爆剤として期待された。起爆剤を失った今、どう本道経済を発展させていくのか、IRに代わる政策の打ち出しが必要だ。
IRは民間投資拡大や雇用の増加などが期待される一方、環境やギャンブル依存症への懸念があることから鈴木知事は「プラス・マイナス両面から総合的に勘案することが重要」と慎重姿勢を貫いていた。しかし、候補地の苫小牧市植苗地区の環境影響評価が申請期限に間に合わないことや、アンケートで不安が期待を上回ったことなどを踏まえ、今回の誘致を断念した。
鈴木知事はIRを「本道の持続的な発展に寄与するプロジェクト」と位置付け、7年後に追加する可能性も見据えて、誘致の準備を続けるとする。だが、今だからこそIRの効果を最大限発揮できるチャンスであった。2018年度に道内を訪れた外国人観光客は312万人と過去最多を記録。北海道人気の高まりを受けて好調に推移している。さらに、20年度の民族共生象徴空間の開業や道内空港一括民間委託、30年度末の北海道新幹線札幌開業など大型プロジェクトがめじろ押しだ。これらプロジェクトと連携することで、インバウンドを呼び込み、IRの経済効果を全道に波及させることが見込まれただけに残念でならない。
本道の観光産業が抱える課題も待ったなしの状況だ。来道観光客は札幌を中心とした道央圏に集中し、他地域との格差が拡大しつつある。国内客は夏季、インバウンドは冬季に集中し、春秋の観光客は低調となる季節偏在も問題となっている。その点、IRは季節変動の少ないMICE施設や四季の魅力を生かしたエンターテインメント施設などを整備することで、年間を通じた需要を創出でき、地域偏在についても、IR訪問客を道内各観光地に送り込む機能をハード、ソフトの両面から整備することにより解消されることが魅力的だった。
現時点でのIR誘致を見送った鈴木知事。次回があるかは見通せず、IRに代わる大胆な政策を打ち出す姿勢も求められる。いかに本道経済を発展に導くのか、知事の次なる一手に期待がかかる。(仲道 梨花記者)
(2019年12月02日付1面)