「地域版BCP」策定を 道内建設業の現状と課題

2020年01月03日 10時00分

今日出人北大院特任教授が論文に

 北大大学院の今日出人特任教授は、北海道建設業協会の会員企業へのアンケートやヒアリングを基に、道内建設業のBCP(業務継続計画)の現状と課題点を論文にまとめた。論文では地域間距離が大きいなどの北海道の地理的特徴を考慮し、地方建協が当該地域の建設業全体をカバーしたり、建協同士が互いのエリアを補完したりするBCPの必要性を強調。大規模災害時に道外からの緊急支援が難しい場合に備え、行政や各産業分野も巻き込んだ広域な「地域版BCP」の策定を検討するべきとした。

 論文は11月27日に東京で開催された土木学会安全問題討論会で発表された。栗田悟道建協副会長らも共同執筆者となっている。

 アンケートにはことし1月までに会員企業583社のうち、56・3%に当たる328社から回答が寄せられた。

 策定状況については、策定済みが策定中を含め164社となり半数を占めた。完工高別に分類すると、100億円以上は全て策定済み。50―100億円が8割強、10―50億円は6割、10億円未満は3割にとどまり、社員数別でも規模が大きくなるにつれ策定済みが高くなる傾向が見られる。

 北海道胆振東部地震に関する設問では、策定済み企業にBCPが機能したかを聞くと、訓練を実施した企業は「十分」「部分的」で6割に上る一方、していなかった企業は3割にとどまり、訓練の有効性が証明された。

 未策定の企業に対しては策定の必要性を確認すると、8割が感じると回答。策定における課題としては「人員」や「組織体制」、「ノウハウ不足」などが挙がった。

 全企業には全道で対応を迫られた大規模停電についても聞き、停電に対応するBCP策定の必要性を感じた企業は8割に上った。

 今特任教授は、巨大地震の発生や降雨の激甚化・集中化が予測される中、北海道は災害記録を含めた歴史的資料が国内他地域に比べ少ないからこそBCPの対象事象をより広範囲に考慮すべきとした。

 また北海道の地理的特徴として、広域分散型地域であり地域間距離が長く、本州とは青函トンネルでしかつながってない点を指摘。災害が長引くと企業単体では燃料の確保などで対応しきれないことも想定されるため、各地方建協が当該地域の建設業全体をカバーしたり、各地方建協同士で互いのエリアをカバーするBCPの策定を提案した。

 人材の観点では、災害の経験値が高い高齢社員が引退する前にノウハウをBCPとして明文化し後任への承継を進めるよう求めた。中小企業に対しては、BCPにかける負担が大手と比べ大きくなるため、工事入札面で策定企業を優遇するなど経済面でのメリットが必要とした。

 今特任教授は、「激甚化する自然災害に対して建設業の役割は非常に重要。その上でBCPの策定は企業にとっても地域にとっても必要不可欠」と指摘。今回の調査が未策定企業の策定促進や策定企業のブラッシュアップ、今後の広域的なBCPの在り方への参考になることを期待している。

(北海道建設新聞2019年12月17日付1面より)


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