道開発事業費 国費ベースで13.2%増の6275億円

2019年12月20日 19時35分

国交省北海道の2020年度予算案 15カ月予算は7558億円

 国土交通省北海道局は20日、2020年度予算案の北海道開発予算を公表した。一般公共事業費に当たる北海道開発事業費は、国費ベースで前年度当初比13.2%増の6275億4200万円を計上。防災・減災、国土強靱(きょうじん)に充てる臨時・特別の措置が19年度に比べ落ち込んだものの当初の通常分が1.5%伸びたため、通常分と臨時・特別の措置の合算分同士で比較しても約25億円、0.4%の増額だ。19年度補正を含む15カ月予算としては7558億3000万円と、12年度の政権交代後最大規模の予算執行が見込まれる。

 北海道局は最優先課題に「18年度北海道胆振東部地震等からの復旧・復興と防災・減災、国土強靱化」と「『民族共生象徴空間(ウポポイ)』を通じたアイヌ文化復興等の促進」の2点を掲げた。

 さらに北海道開発重点事項として「農林水産業・食関連産業の振興」「世界水準の観光地の形成」といった北海道総合開発計画に基づく取り組みや、強靱で持続可能な国土の形成、アイヌ施策、北方領土隣接地域振興対策なども進める。 

 事業別で見ると道路は、道路整備と道路環境整備合わせて2522億9700万円を積み上げており、19年度当初の通常分と比較すると14.5%の大幅増。臨時・特別の措置を除いた通常分同士の比較でも、10.9%増の2402億8800万円だ。

 この伸び率は新たに創設された道路メンテナンス事業補助による押し上げで、道や市町村の道路橋梁やトンネルの更新、撤去に充てられる。また、倶知安余市道路や道央圏連絡道路などで広域の物流・観光などの道路ネットワーク構築を促進するほか、地域高規格函館環状道路は20年度完成を目指す。

 治水は23.5%増の1146億3800万円で、通常分比較でも1.8%増の944億8800万円を確保。集中的な対策を実施する箇所として治水リーディングプロジェクトに国交省が選んだ北村遊水地と幾春別川総合開発のほか、直轄河川、道や市町村管理の中小河川においても予算を措置して河道掘削や河道内樹木撤去といった対策を施す。

 直轄ダムは沙流川総合開発平取ダム、幾春別川総合開発新桂沢ダムで堤体建設を継続。雨竜川ダム再生については着工に向け調査を進める。

 農業農村整備は13.9%増の887億4200万円、通常分は779億9600万円で0.1%微増しており、農地の大区画化やかんがい排水網の整備などに取り組む。水産基盤整備は10.7%増の261億7100万円で当初比でも0.1%増加していて屋根付き岸壁の整備などを進める。

 空港は39.3%減の113億9000万円だが、7空港一括民営化の運営権対価といった収入を財源に一般会計歳出を削ったためで、特別会計の空港整備勘定は0.1%微増の199億6000万円を確保。21.1%増、209億1500万円の港湾は通常分でも0.6%微増し、苫小牧港や釧路港、石狩湾新港などで国際物流ターミナル整備を推進する。

 道や市町村向けの交付金は、社会資本整備総合交付金が4.2%減の338億6300万円、防災・安全交付金が15.9%増の408億2100万円。防災・安全交付金の一部は道路メンテナンス事業補助に移行したため通常分は減少した。

 公共工事の施工時期平準化の取り組みを強化するため、17年度予算から導入した当初予算ゼロ国債には299億5200万円の枠を設定。道路に約192億円、河川に約56億円、道路や河川など都市環境整備に約40億円、農業農村整備に約3億円、水産基盤整備に約8億円、治山に約6000万円という内訳だ。

 19年度補正の1282億8800万円を加えた執行ベースの15カ月予算で見ると、国費7558億3000万円で、19年度を1.5%上回る規模に。主要事業の15カ月予算では道路環境整備を含む道路系2744億5800万円、治水1394億3700万円、港湾232億1100万円、空港113億9000万円、農業農村整備1389億3500万円、水産基盤整備330億5300万円などとなっている。

 解 説
 全国上回る水準確保 8年連続で事業費が増額 

 防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策で大幅増となった2019年度当初予算の規模を上回る編成となった20年度当初開発事業費。最終年度の臨時・特別の措置は19年度より59億4700万円減額の644億3800万円だったが、通常分の伸びが力強く85億300万円増の5631億400万円とし8年連続の事業費増となった。

 政府全体の一般歳出のうち、公共事業関係費は6兆8571億円。19年度当初に比べ通常分は73億円微増したが、臨時・特別の措置は601億円減少し、合算すると528億円減らした。

 一方、通常分と臨時・特別の措置を合算した金額同士の比較でも開発事業費は19年度比0.4%の増額を守り全国を上回る水準を確保。このベースで比較すると治水が3%増、道路環境整備を含む道路系5.8%増、港湾13.3%増、農業農村整備が1.7%増と主要部門全てが増加した。

 水産基盤整備は臨時・特別の措置が減少したものの、通常分は0.1%増を確保。空港の減少は民営化により一般会計負担分を減らしたことによるもので、一般会計や空港使用料などから成る特別会計の空港整備勘定自体は微増している。

 さらに3年ぶりの経済対策として措置された19年度補正予算において、開発事業費にも18年度2次補正を上回る1282億8800万円を措置。一体的な15カ月予算としては約7558億円、アベノミクスの経済対策で激増した13年度を上回る規模と言える。

 19年度に引き続く大規模編成のため、不調・不落対策も必須。赤羽一嘉国交相は記者会見で遠隔地の交通・宿泊費負担、見積もり活用、技術者要件緩和などの対策を講じるよう北海道開発局や地方整備局に指示しており、官民連携での発注円滑化が求められる。

 3カ年の臨時・特別措置完了で21年度以降の予算減少が懸念されるが、本道の食と観光を支える道路や港湾、空港といった交通・物流ネットワークの構築と農林水産業の経営基盤強化には継続的な公共投資が不可欠。国交省は地球温暖化による気候変動を勘案した河川計画や土砂災害対策を検討するが、最新の知見を踏まえた自然災害対策にも安定した開発事業費を継続的に投じていく必要があるだろう。

(建設・行政部 松藤岳記者)


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