注目のIR誘致は「見送り」に 挑戦問われる新年度予算編成
4月23日、選挙戦を制して初登庁した鈴木直道知事は、就任会見の冒頭で「どんな困難も恐れることなく果敢に挑戦する」と決意を語った。第一歩を踏み出した若い知事に、北海道の将来を託した道民は、彼がどんな政治手腕を振るい、どんな未来を描くか注目していた。
直ちに着手した組織づくりでは、道政史上前例のない副知事3人の一斉交代を断行し、本庁8部長のうち7人を代えるなど大胆な人事を実行。さらには次課長職で中央官僚も招き、公約実現への体制を固めた。
急増するインバウンドで、受け入れが限界に近づく新千歳空港の対策では、内閣官房長官らへの要請後、わずか1週間で発着枠拡大を獲得。中央とのパイプも印象付けた。
そんなスタートを切った鈴木知事にとって、最大の決断を迫られたのはカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致だった。
10月に苫小牧市議会は誘致推進を決議し、11月下旬には経済8団体が誘致を要請。海外のIR事業者が続々と苫小牧に事務所を構えるなど、地元や経済界は盛り上がりを見せていた。
しかし、鈴木知事の決断は「誘致の見送り」だった。候補地である苫小牧市植苗地区の環境評価が区域整備計画の申請期間である2021年7月30日に間に合わないことを考慮した。
道が4月にまとめた基本的な考え方では、課題への対応策はギャンブル依存症が中心となり、自然環境への影響は考慮すべき点に挙げてはいたものの、具体的な対策は明記されていなかった。その後も議論されることは少なく、一般的に3年程度かかる環境影響評価は手付かずだった。
判断期限が刻一刻と迫る中、環境影響評価の手続きが申請期限に間に合わないとの懸念が急浮上。道議会最大会派の自民党・道民会議が誘致への意見を集約できなかったこともあり、誘致ムードから見送りへと急転した。
鈴木知事は、最初の認定から7年後に区域認定数の再検討があることから、今後の誘致も見据えて準備を続ける考えを強調している。誘致に挑むのであれば、自然環境のみならず、IR誘致の課題を的確に捉え、万全を期さなければならない。次回判断での〝待った〟はない。
本道経済は一進一退を繰り返している。18年度に初めて300万人を突破したインバウンドは、長引く日韓対立により好調さに暗雲が漂い始め、人口減少と札幌一極集中の進行で地方部は疲弊したまま。課題は山積する。
年が明ければ新年度予算の編成作業が本格化する。鈴木知事が初めて一から組み上げる予算だが、硬直化する財政の中でどんな政策を打つのだろうか。2月の出馬表明から何度も口にした〝挑戦〟という言葉。その覚悟が問われる2年目が近づく。
(北海道建設新聞2019年12月19日付1面より)