大会成功に向け準備急ピッチ 本道の中長期的発展へ結実を
多くの道民にとって、驚きの出来事だったに違いない。11月1日、国際オリンピック委員会(IOC)は2020年東京五輪のマラソン・競歩の札幌移転について、大会組織委員会や東京都などとの協議を経て正式決定した。以降、発着会場や日程の選定が矢継ぎ早に進み、札幌市や道は大会の成功に向けた体制づくりに注力している。国内外からの大きな注目の下、前例なき挑戦の号砲が放たれた。
大会の開幕まで9カ月を切る中での、異例とも言える開催地の変更決定から約7週間。札幌開催に向けた準備は急ピッチで進んでいる。
発着会場は市内中心部の大通公園を選定。競技日程は8月6日から大会最終日の4日間で、マラソン・競歩合わせて計5種目の実施が決まった。
競歩は札幌駅前通を南北に周回するコースを採用。マラソンも周回コースとし、1周目約20㌔の舞台に北大構内や道庁赤れんが庁舎など本道の代表的なスポットをちりばめた。その後は市内約10㌔を2周し、1周目と合わせて変則的な3周コースを設定した。
移転決定の際に懸案とされていた費用負担の問題では、市と道の負担分を道路補修や会場周辺セキュリティーなどの行政経費とすることで決着した。市は第4回定例市議会で、市が管理する道路部分の舗装などに7億円の債務負担設定を求める追加議案を可決。20年5月までに工事を完了させ、翌月の世界陸連によるコースの最終確認をクリアしたい考えだ。
大会の成功に向け、地元行政は体制強化にも乗り出した。市は秋元克広市長をトップとする東京2020大会推進会議を発足。市役所内での迅速な協力のため、観光や交通の分野で役割分担や連携確認、情報共有を図る。道も庁内に開催支援本部を設置予定で、鈴木直道知事を本部長として機運醸成や本道の魅力発信へ全庁的に取り組む。
一方、克服すべき課題も少なくない。競技の安全な実施に欠かせない警備員やボランティアは、確保に向けた早期の手配が求められる。また、道は赤れんが庁舎の大規模改修について工期を延長し、五輪期間中の足場や仮囲い設置を避ける方針。世界中の関心が集まる五輪を通じて魅力をアピールする狙いだが、工事業者との調整やスケジュール変更など早期に方向性を固める必要がある。
「マラソンは五輪の華」―。地元協力を鈴木知事に要請した際、大会組織委員会の森喜朗会長はこう表現した。花形競技であるマラソン、そして熱戦が予想される競歩の開催成功は、道内への観光客数増加や、市が目指す30年冬季五輪・パラリンピックの招致に結び付く可能性を秘める。過去に例を見ないチャレンジに関係者が一体となって取り組み、本道の中長期的な発展につなげてほしい。(おわり)
(北海道建設新聞2019年12月20日付1面より)