函館市は第23回都市景観賞に、蒲生商事(本社・函館)が所有する伝統的建造物を活用した複合施設「大三坂ビルヂング」を選定した。応募総数21者の中から唯一の受賞。現代の暮らしと調和していることや、函館らしい景観の形成に寄与している点が受賞の決め手となった。
末広町18の25[MAP↗]の同ビルは、仁寿生命函館支店として1921年に完成。W一部土蔵造、2階、延べ329m²の規模で、蒲生商事の事務所のほか、シェアオフィス、ゲストハウス、レストランなどが入居し、地域住民に親しまれている。
古民家再生などを手掛ける箱バル不動産(本社・函館)が元所有者から維持保全に関する相談を受け、蒲生商事が建物を取得。市の伝統的建造物の指定を受けた上で、2016年から17年にかけてリノベーションした。
設計監理は箱バル不動産の副代表社員である富樫雅行建築設計事務所の富樫雅行代表が担当し、山建中川組が施工した。地域住民など100人以上が工事に携わったほか、クラウドファンディングで工事費の寄付も募ったという。
20日に市役所で開いた表彰式には、箱バル不動産の代表社員を務める蒲生商事の蒲生寛之常務と富樫氏が出席し、工藤寿樹市長らから表彰状を受け取った。
蒲生常務は「たくさんの方が関わって再生させたことを評価していただきうれしい」と話す。
伝統的建造物に指定されていなくても価値のある建物は眠っているとし、「異業種と連携しながら函館ならではの新たな価値やイノベーションを生み出したい」と今後を展望している。(函館)
(北海道建設新聞2019年12月25日付9面より)