天候に左右されない体制必要
三十数年ぶりの記録的な少雪となった札幌市で、道路除雪を担う地場建設業者が不安を募らせている。いまだ本格出動がない地区もあり、契約額が減額される可能性が強まっているためだ。少雪でも待機人員や機械の費用は発生する。経営者の1人は「このままでは採算悪化で来冬の体制確保にマイナスの影響が出かねない」と晴天を見上げ表情を曇らせる。
札幌市中央区の累積降雪量は8日時点で115cmと平年の60%弱。暖気流入もあり積雪深は9cmと20%下回る。札幌管区気象台によると積雪深が10cm未満となるのは、1984年以来36年ぶりとなる。
市道除雪の全線出動は7日時点で幹線道路が2・4回、生活道路が0・6回。過去5年の平均と比べ幹線は4分の1、生活道路は7分の1の水準だ。
南区、清田区など全線出動が一度もない地区もあり、10年以上の経験がある除雪センター長は「この少雪は経験がない」という。
平均6m近い降雪がある197万都市の道路維持、除雪を担う建設業は毎年多くの人員、除雪機械、ダンプ車両を動員し、24時間体制を整えている。
一方で、費用清算は出動回数や排雪運搬量に応じた出来高払いが基本。発注時の設計を下回れば受注額から減額される。
待機だけでも人件費や機械損料、賃料は生じるため、対策として市は出来高が設計に達しない部分の一部費用を支払う待機補償制度を設けている。
これまで有効に機能してきた制度だが、記録的な少雪に除雪関係者の多くは「このままでは待機補償があっても出来高が上がらず、採算ラインを確保できるか分からない」と不安を募らせている。
除雪は後半戦に入るが、長期予報は平年並みかやや下回る見込みで出来高の挽回は難しいとの見方が強まっている。ダンプ輸送を手掛ける会社は「市外で土を運ぶ仕事探しを始めるところもある」など、しびれを切らすところも出てきた。
今冬の影響もさることながら、関係者が心配するのは来冬の体制確保。除雪で稼ぐことができなくなれば「人も車両も道外に出稼ぎに出るところが増えるだろう」と実務関係者はみる。
除雪は担い手の高齢化など体制維持が危ぶまれている。大幅な採算割れが生じれば、維持はさらに難しくなる。その危機感に「少雪時でも安定して採算が確保できる新たなルールが必要」との声が強まっている。
除雪事業者で構成する札幌市除雪事業協会の宮浦征宏会長は「極端な少雪時の採算確保に向け、待機補償料の見直しなど制度的な議論を進めるべき時」と指摘する。
これまでも出来高不足の採算割れは、少雪のたびにクローズアップされてきた。今後はさらなる温暖化の進展が考えられる。今冬の影響も気になるところだが、記録的な少雪を天候に左右されず安定的に体制を確保する環境づくりのきっかけとする必要がある。
(北海道建設新聞2020年1月10日付12面より)