札幌・ポートランド交流記念 クラフトビールが販売成功

2020年01月15日 12時00分

札幌の醸造家が米オレゴン州ポートランドの醸造所と共同で製作

 昨年7月から8月にかけて、札幌市内を中心とする飲食店や酒店に見慣れない2種類の缶ビールが登場した。札幌市と米オレゴン州ポートランド市との姉妹都市交流60周年を記念して、双方のビール醸造家と醸造所が共同で造った限定クラフトビールだ。市民有志の共同出資で進めた活動だが、予定数量を年末までに売り切り、赤字を出さずに活動を終了。ユニークさと採算性を両立させた市民プロジェクトはどのように実現したのか経緯を追った。

60周年と60人を表した缶デザイン

 缶の基調色はそれぞれ青、オレンジ。顔の前にかざした手で「60」を表現する絵柄は札幌のデザイナーの作品だ。中身は札幌の醸造家がポートランドの醸造所を訪ねて仕込んだビール。現地で完成させて缶に詰め、札幌の業者が輸入・販売する。ブランド名は都市にちなんで「SAPPORTLANDER’S(サッポートランダーズ)」とした。

 味はホップの苦み・香りを強く出すタイプと、小麦を使った香り豊かなタイプの2種類。店頭価格は355㍉㍑で500円強と一般的な大手製品の2倍だが、ビールファンから好評を博し、商業広告を打たずして合計1万缶の卸売りという目標を達成した。

事務局代表を務めた大阪氏

 「多くの方々の協力でここまでやれた。ほっとしている」と振り返るのは、フリーランスで広告制作の企画・コピーライティングを手掛ける大阪匡史氏(47)だ。今回のプロジェクト案を練り上げ、案が実際に動きだしてからは事務局代表として関係者間の調整に奔走した。

■渡航が契機に

 ポートランドは、65万人の人口に対して醸造所が約70カ所ある「クラフトビールの街」として知られ、米国内でも活気ある地方都市として人気が高まっているという。かねて同市の評判に触れ、関心を持っていた大阪氏は2017年夏、自費渡航して現地大学のまちづくり人材育成プログラムに参加。帰国後、ポートランドに縁のある有志らと市民交流プロジェクト実現に向けて話し合いを重ねるようになった。

 翌18年前半には、記念ビールを造る構想が固まる。味、名前、デザインなどを札幌側で企画し、ポートランドで造るアイデアだ。大阪氏ら有志は夏以降、札幌で開かれるビールイベントに参加して仲間を募ったり、市内の醸造所や業者を訪ね歩いたりして支援者を増やした。同年暮れまでに、えぞ麦酒(本社・札幌)、ファーマーズ(同)など4業者が製造や輸入販売で協力を約束してくれた。

■あえて無利益

 問題はプロジェクト資金の確保だ。事前調査で割り出した総予算は約450万円。市民組織の資金調達としてはクラウドファンディングが知られるが、全国から不特定多数が関われば企画で意見集約するのは不可能だ。

 考えついたのは、札幌の飲食店や会議室などに集まれる人数で、ポートランドやビールに思い入れを持つ人に均等割で資金提供してもらうことだった。目標は60周年にちなんで60人とした。1人当たり7万5000円。集めた資金でビールを製造、輸入販売し、粗利益から諸経費を引いた残額を返還する。

 ポイントは、協力業者を除いて誰ももうからないようにしたことだ。投資性があれば、出資法や金融商品取引法といった法規制の対象になりかねない。製造量をあえて損益分岐点ギリギリの1万缶に設定。全量を売り切って初めて赤字を免れる。資金提供者に対しては、最大でも出した同額を戻すだけで、ビールが売れ残れば減ったお金と商品現物を返納すると強調した。

■道外へも流通

 19年の元日、大阪氏らはFacebookに「札幌・ポートランド姉妹都市提携60周年記念ビール委員会」のページを開設。1月7日から参加者、つまり資金提供者を募った。1000円程度でも参加できるクラウドファンディングとは桁違いの高額。「事前の声掛けで見込めていたのは十数人程度」(大阪氏)だったが、愛好家の口コミ効果もあって9日午後、募集開始から67時間で目標人数に達した。札幌圏在住の男女30―50代が中心で、中には道外の愛好家もいた。

 その後SNS投稿とオフ会での議論を経て、ブランド名、大まかな味の種類、デザインが3月までに決定。4月に醸造家らが渡米し、7月、背面デザインに60人全員の名前が入ったビールの流通が始まった。

 直接関与していない札幌市も、缶デザインへの姉妹都市60周年の公式ロゴ使用を許可。また、10月下旬にポートランドから訪問団が来札し、公式行事として札幌でレセプションが開かれた際には、会場に大手製ビールとともに青、オレンジの缶も並べられた。

 サッポートランダーズを扱う飲食店や酒店は、札幌市内のほか本州を含む80店近くに及んだ。12月、店頭などの流通在庫が残るのみとなって、全員に提供資金全額が戻された。

 市民プロジェクトは全国、道内各地で絶えず発案されるものの、資金や人のめどが立たずアイデア倒れに終わる例が多い。だが関係者の熱意とやり方次第で成功を収めることもできる。60人のクラフトビールプロジェクトが、それを証明する格好となった。

(北海道建設新聞2020年1月14日付3面より)


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