深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り Will―E 根本英希社長

2020年01月17日 10時00分

根本英希社長

次世代のまちづくりを

 札幌モーターショー2020が17日に開幕する。出展者の1人として、寒冷地での電気自動車(EV)開発に取り組むWill―E(ウィルイー、本社・札幌)の根本英希社長に最近の市場動向や小型EVへの思いを聞いた。

 ―道内のEV研究について。

 道内企業による組織的な取り組みでは、13年の北海道発EV研究開発・利活用研究会の発足が始まり。道内ではEV開発に消極的な意見が多いが、「だからこそ北海道の企業が取り組むことに価値がある」という思いからスタートしたと聞いている。

 Will―Eが参加するようになったのは14年から。設計などを手伝わせてもらい、16年の札幌モーターショーで道産EVのコンセプトカーを出展した。

 現在は研究会の名称を「チームNEVS(ネブス)」に変え、当社と倉本鉄工所、光源舎オートプロダクツ、西野製作所、フィールド・クラブ、福地建装、フラット合成、北翔の8社で活動する。コーディネーター役として中小機構北海道本部も参画している。

 ―道内でEV開発が消極的な理由は。

 寒いところだと電池の消耗が早いためだ。北海道は気温マイナス30度になる地域もあり、ガソリン車でもバッテリー上がりなどの潜在的な課題を抱えている。実際、寒冷地仕様の自動車は市場全体の5―6%と少ない。事業性からも自動車メーカーが寒冷地用の車に特化することは難しい。

 ―最近のチームNEVSの活動を。

 四駆の小型EVは、コストがかかりすぎるため開発をやめた。冷暖房の面から気密性の良いボディーも研究したが、コストと手間がかかりすぎることから断念した。これまでの研究を通し「暖かい服装で、げた代わりに使ってください」という基本的な考え方に行き着いた。

 市場ニーズが固まっていないのも理由だ。小型EVを乗用車の代わりと考える人もいれば、免許返納後の移動手段と考える人もいる。パーソナルユースのモビリティ(移動)に対し、どう地域で受け入れれば良いかという、まちづくりの考え方もまとまっていない。

 今は、できるだけ小型EVの使える環境をつくり、利活用してもらうレンタルやリースを進めている。市場が醸成すれば、われわれとしてもニーズを踏まえた車両開発に向き合いやすくなる。

 ―出展する最新車両について。

 COCOMO(ココモ)という名称を付けた。これからの再生可能エネルギーを使って動くモビリティは、移動する人数に合わせて最適の移動体となることが理想だ。これまで開発してきた小型EVは、1人で移動するために使うパーソナルモビリティ。2人や3人で移動する際は、その後ろに別の移動体を連結すればよい。

 COCOMOは、モーターによる補助動力を持った移動体。先頭車両をパワーアップさせることなく、移動する人数に合わせてモビリティを柔軟に連結できる。当面は観光産業での利用を考えている。

 ―今後への思いを。

 僕らが持っているシーズ(技術)を提案し、まずは体感してもらいたい。体感の結果、来るべき次世代のまちづくりをどうすべきか考えてほしい。ひいては、まちづくりで必要なモビリティを見いだす中小企業の枠組みの循環にしたい。もはやメーカー誘導型の市場づくりは駄目だと思う。

(聞き手・佐藤 匡聡)

 根本英希(ねもと・ひでき)1987年北見工大卒、いすゞ自動車入社。小型ディーゼルエンジンの設計開発業務などに携わった後、2003年に独立。Will―Eを設立し代表取締役に就く。

(北海道建設新聞2020年1月16日付2面より)


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