今春からオーナーサポート本格化
道内で最も多い住宅の賃貸物件を管理する常口アトム(本社・札幌)。2020―22年の中期経営計画では築年数が古くアパート運営に問題を抱えるオーナーに対し、リフォームなどの改善策を提案するソリューション営業部新設を盛り込み、春から本格的に活動する。22年までに売り上げ100億円を目指す三戸篤人社長に事業戦略などを聞いた。
―中期経営計画の目標は。
札幌に40人体制のソリューション営業部を設け、提案型で攻める経営を盛り込んでいる。売り上げは90億円から3年で100億円を目指す。現在4億円台の経常利益も増やしたい。IT化が進む近年、利益が出ないと設備投資はできない。物件を顧客に紹介するシステムはまだまだ物足りないといえる。
今は法律的に不可能だが、将来は現金自動預払機(ATM)のようにスーパーやショッピングモールなどに物件の検索ができる情報機器を置き、その場で賃貸契約までできるようになればいい。業務の無人化が進めば店舗数や人件費を抑えることにつながり、効率的な経営ができる。
―ソリューション営業部に期待することは。
築年数の古い賃貸アパートやビルが増え、中でも築30年を経過するアパートは多い。オーナーも高齢化し、相続問題も起きていてこのままではジリ貧になるだろう。こうした問題を抱えるオーナーをサポートするため、新たな組織を設けた。
少子化が進んでいることから今後、アパートがどんどん建つ時代ではない。古い物件であっても生活様式に合わせたリニューアルをすることで付加価値を高め、空室を埋めることは可能だ。こうした物件を保有するオーナーとの接触回数を増やし、収入増につながる提案を進めていければ。どういうニーズがあるのか市場調査を進めている段階で、春から本格的に受注へつながる活動を展開する。
―人口減少が進む中で、住宅をはじめとする賃貸仲介を取り巻く環境は。
空港民営化により新千歳空港が国際線を中心に大きくなるということで、千歳市では空港で働く従業員向け賃貸物件が増加傾向にある。このほか都市再開発が進む新さっぽろや恵庭など札幌圏を中心に安定した需要がある。
人手不足で外国人労働者が増える中、ガソリンスタンドやスーパー、ホテル、介護を営む企業が賃貸借契約する案件も相次いでいる。特に観光関連が伸びれば伸びるほど、外国人労働者を従業員として採用するケースは増えるだろう。弊社ではこれまで道内で100人程度の仲介をした。自社で社宅を造る場合もあるが、それができない企業は賃貸住宅を頼ることになる。
このままだと外国人労働者向けのリーズナブルな賃貸物件は足りなくなることから、稼働率が悪くなった築年数の古いマンションや閉校した学校を買い取り、リノベーションして部屋を賃貸するという発想はある。本州では事例が出てきている。少子化で世帯数が減っているだけに今までと同じではビジネスは縮小するだろう。今進めている事業から派生させ、どういうことができるのかを考えながらチャレンジしたい。(聞き手・武山 勝宣)
三戸篤人(みと あつひと)1952年7月5日、余市町生まれ。75年小樽商大卒。北海道銀行常務執行役員地区営業担当兼本店営業部本店長、北海道リース社長を経て、2018年7月に常口アトム社長に就任。
(北海道建設新聞2020年1月22日付2面より)