建築業界は歓迎の声も
全国的な暖冬に伴い、道内では除雪関係の企業を中心に気候の先行きを心配する声が多く聞かれる。その一方で、寒さや雪が仕事の妨げになる建築関連の業者からは少雪を歓迎する声も。明暗が分かれた今冬を追った。
「年末は冗談交じりで少雪を笑っていたが、年が明けても状況は変わらず、さすがに焦ってきた」。この時期、例年なら80cm前後の積雪深になる深川市内。今シーズンは30cm程度にとどまり、除雪用グレーダーの出動回数は地区によって例年の3割ほどだ。市内のある土木会社は「2019年度は半分ぐらいの出動になるのでは。億単位の売り上げだけに、経営面の影響は大きすぎる」と厳しい状況を打ち明ける。見切りを付け、本州へ仕事を求めるダンプのドライバーも出ているという。
ロータリー除雪車などの製造を手掛けるNICHIJO(本社・札幌)は、消耗部品の売り上げに影響が出ている。各地で除雪車両の稼働が少ないためだ。本州の売上比率が6割強で、道内に限らず全国的な少雪の影響を感じているという。
鉄道は除雪費用を抑えられる半面、道路状況がよいため車移動からの客のシフトが起こらず利用が低迷。JR北海道が中旬に発表した12月の列車利用状況によると、函館方面(東室蘭―苫小牧間)の乗客は前年同月比で3.5%減少。釧路方面(南千歳―トマム間)は6.6%、旭川方面(札幌―岩見沢間)は7.3%それぞれマイナスだった。札幌駅の乗降者数は3.2%減、新千歳空港駅は1.6%減だった。
ビートソニック(本社・愛知県日進市)は、新しい融雪・凍結防止システム「Hotpillar(ホットピラー)」の発売を目指し、道内でテストを重ねている。小樽事業所の芦立寛十郎LED融雪システムプランナーは「雪庇(せっぴ)対策に興味を示す人がいるが、1晩で30―40cm積もることがなく、そもそも雪庇ができないため、効果を検証するのが難しい」と話す。少雪が続けば「システムの売り方を考える必要があるかも」と懸念している。
穏やかな冬を歓迎する会社も少なくない。北海道板金工業組合札幌支部の三浦弘幸支部長は、10日の新年交礼会で「ことしは雪が少ないため、どこも仕事がはかどっているのでは」と近況を話した。札幌市内の砕石工場は例年より1―2週間長い、12月末ぎりぎりまで仕事を続け、在庫の積み増しを進めた。
札幌は20日からまとまった雪が降り、少しずつ例年の冬景色となってきた。コースを制限して営業してきた市内スキー場も滑走可能なコースを広げ、降雪が続くことに期待を寄せる。
本州では、山形県が暖冬による記録的な少雪の影響で売り上げ減少が懸念される中小企業に対し、金融支援を始めた。社会現象が地域経済に影響を与える際に適用される「地域経済変動対策資金」を活用。スキー場リフト運営会社や飲食店、宿泊施設などを想定している。
札幌管区気象台が23日に発表した北海道地方の1カ月予報によると、日本海側は平年に比べ曇りや雪の日が少なく、オホーツク海と太平洋側は晴れの日が多いという。全道的に気温は31日まで平年並みだが、2月1―7日は高くなる見込みだ。
(北海道建設新聞2020年1月24日付3面より)