将来の就職選択基準にも
SDGsは、全ての国を対象に経済、社会、環境の3つの側面でバランスが取れた社会を目指す世界共通の目標として2015年に国連で採択された。30年までの達成に向け17のゴール(目標)と169項目の具体的なターゲットで構成している。
企業がSDGsに取り組むメリットとしては大きく①企業の生存戦略となる②企業イメージの向上③社会課題への対応④新たな事業機会の創出―4点が挙げられる。
①については、SDGsを達成するために環境と社会、企業統治の「ESG」に配慮した投資を推進する国連責任投資原則(PRI)には18年11月時点で全世界で2188社が署名。日本は67社と10位につけている。ESG投資の残高を見ると、近年の世界全体の伸びと同調して日本でも16年の0・5兆ドルから18年には2・2兆ドルに拡大している。道の政策局計画推進課SDGs推進グループの渡辺訓男主幹は「中小企業だから関係ないという話ではなくなっている。この流れは強まることはあっても弱まることはない」と断言する。
②に関しては、2000年代に成人や社会人となるミレニアル世代以降の環境や社会問題を自分事として捉える「SDGsネイティブ」の存在が大きく関係する。環境省北海道環境パートナーシップオフィスの大崎美佳氏によると「今の子どもたちは小学校から大学までの学校教育でSDGsを学んでいる」という。将来、消費者や発注者の立場に立ったとき、金銭的な価値や地域貢献、環境への配慮を評価するばかりでなく、働きやすさを優先して就職先を選ぶ思考が育まれる。
③、④は社会課題の解決に取り組むことで経営リスクの回避や社会貢献につながる以外に、イノベーションや新たなビジネスパートナーとの出会いにつながる可能性を秘める。
こうした重要性が指摘されるSDGsだが、渡辺主幹はそもそも企業活動自体が「地域のためでないと成り立たない」と指摘。建設業に関しては「地域の人が安心して暮らせる社会をつくるには一定のインフラは必要不可欠。強靱(きょうじん)な国土や建物を造ることはSDGsの中でも大きな位置付けになっている」と、建設業の在り方自体がSDGsの理念に合っていることを強調する。
その上で「自社でやっている取り組みをSDGsという世界的な目線で見たときに強い所や弱い所を探す物差しとして使える」とし、企業の業務や経営方針を見直す機会にすることを勧める。
(北海道建設新聞2020年01月16日付1面より)