走り出したSDGs~建設業が取り組む意味

 昨今、かけがえのない地球環境を守り多様性と包摂性のある社会の実現に向け、SDGs(持続可能な開発目標)への実現に取り組む企業が増えている。道のSDGs推進ネットワークの登録団体463社・団体のうち、建設業は60社近くあるが、まだ多くに認知されているとは言えない。建設業がSDGsに着手する意義について報告するとともに、道内で先進的に取り組む企業を紹介する。(6回連載します)

走り出したSDGs~建設業が取り組む意味(6)タマガワ塗装

2020年02月10日 16時00分

地域の団体として実践 持続可能な事業へ指標に

刷新した経営理念と経営方針を掲げる玉川健吾業務部次長

 外壁塗装と屋根塗装の専門業者であるタマガワ塗装(本社・苫小牧、玉川健仁社長)は、2019年春からSDGsを導入した。20年に創業70周年を迎える同社では、持続可能な事業経営の実現に向け、社員の意識改革と周知に取り組んでいる。導入推進の中心となっている玉川健吾業務部次長は「持続可能な事業推進への指標ができた」と自負する。社員への理解に向けて周知している段階だが、目標達成へ確実に歩みを進めている。

 同社は下請けを挟まない完全自社施工。一から育てた職人は塗装技能士の資格を取得、管理者も全て建築施工管理技士の国家資格免許を保持している。この体制で営業している市内の塗装リフォーム会社は同社だけだという。市内ではSDGsに取り組んでいる企業も少ない。

 19年1月に開かれた日本青年会議所京都会議で鎌田長明会頭(当時)が「2019年、青年会議所は日本で最もSDGsを推進する民間団体になる」と宣言したことが、SDGsに取り組むきっかけとなった。苫小牧青年会議所に所属している玉川次長は、地域の団体として取り組みを実践していくためにまず学びを深めたという。

 建設業のきつい、危険、汚いというイメージを払拭(ふっしょく)して、働きがいのある会社にしなければ事業存続が危ぶまれる。同社では、SDGsの17の目標から、「働きがいも経済成長も」と「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任、つかう責任」「パートナーシップで目標を達成しよう」の4つを選択した。

 塗装業は顧客に住環境サービスを提供している会社だ。「お客さまが安心して住環境を長く確保できるような体制づくりが必要」と話し、顧客や協力会社、他産業とパートナーシップを結ぶことが重要だと強調する。

 塗装では石油系のペンキを使用するが、技術の進歩により水性系で代用できるようになった。「30年までに廃棄物の発生防止、削減、再生利用などといった目標を達成したい」と力を込める。

 同社では経営理念や経営方針を刷新。パートナーシップを結ぶためにも情報発信していかなければと、70周年を機にホームページも作成した。途切れることなく商売を続けていくためにも、知ってもらうことは大事だ。ホームページ閲覧から商売につながったこともあり、手応えを感じている。

 社員にSDGsの意義や内容を周知するため、社内周知会や懇親会などコミュニケーションの時間確保は欠かせない。「まずは社員に理解してもらわないと。そこからアクションにつながっていく」と、これからの展望を見通す。

 SDGsは、民間企業が社業を通じて社会貢献を達成できる具体的な目標。SDGs実現に向けて、着実な取り組みが始まっている。(おわり)

(北海道建設新聞2020年1月27日付1面より)


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(この連載は、建設・行政部の大坂力、函館支社の鳴海太輔、網走支局の出崎涼、苫小牧支社の乙部真貴子が担当しました)

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