日本でもSDGsの取り組みを進める企業が増えている。RCE北海道道央圏協議会が2018年に実施した道内企業へのアンケートによると、6割がSDGsを「全く知らない」「知らない」と回答するなど十分に認知されていないが、企業の将来像や方向性を知る手掛かりになるのは確かだ。
企業が取り組む理由は、環境と社会、企業統治の「ESG」に配慮した投資の増大など経済面での盛り上がりや問題解決への挑戦が新規事業の開拓などにつながるからだ。
自社の経営方針や業務内容を見直す機会としても活用できる。SDGsの目標には社会インフラの整備など建設業に密接に関わる項目のほか、労働環境の改善など現在進行形で進められている取り組みもある。普段から実践している取り組みをSDGsという世界的な物差しで測り直すことで自社の価値を再発見することができるためだ。
建設業で急務となっている担い手の確保についてもSDGsは大きな影響を与える。それは、1980年ごろから2000年にかけて生まれたミレニアル世代以降の「SDGsネイティブ」がこれからの組織の中心を担うからだ。この世代はSDGsの目標に掲げられているような環境、社会の課題を自分事として捉えることを特徴としている。
デロイトトーマツコンサルティングが18年度に発表した世界中のミレニアル世代への調査では、企業が達成すべきと考える課題を聞いたところ、「仕事の創出と雇用の提供」や「地域社会の改善」が上位に上る一方で、一般的に企業が求めている「利益の創出」「効率性の追求」「商品やサービスの生産と販売」の順位は低かった。
日本においても日経ESGと日本総合研究所が20、30代に対して実施した調査では、仕事を通じて環境や社会課題を解決したいと考える人は4割を超え、このうち収入が少なくてもこれらの課題に積極的な企業で働きたいという人は4割いた。
彼ら彼女らは、01年のニューヨーク同時爆破テロや08年のリーマンショック、11年の東日本大震災などをリアルタイムで目撃、経験しているため、環境問題や社会課題に対する感度が高く大企業やブランドへの信頼が低いという。
企業の存続において今後、SDGsネイティブの存在を無視することはできない。この世代に対して、企業のSDGsへの取り組みは環境問題や社会課題への態度表明となるだろう。(大坂力記者)
(北海道建設新聞2020年1月28日付1面より)
関連連載