一般会計が過去最大を更新 札幌市の20年度予算案

2020年02月04日 15時00分

建設事業費は補正含め1179億円

 札幌市は3日、総額1兆6708億9400万円に上る2020年度予算案を発表した。一般会計は前年度比(肉付け補正後)0.7%増の1兆295億円で過去最大を更新した。経済対策で一体運用する19年度補正予算案178億円を同時編成。これを加えた「15カ月予算」の一般会計は1.8%増の1兆472億円となる。都市強靱(きょうじん)化、再開発による魅力向上などを盛り込む15カ月の建設事業費は一般会計で7.7%増の1179億円、特別、企業会計を含む総額で8.7%増の1764億円を計上した。(詳細は8面に)

■15カ月予算

 20年度当初予算案は、19年度補正予算案と合わせ18日開会予定の1定議会に提案する。

 当初の内訳を見ると、特別会計は2.1%増の3712億7000万円、企業会計は1.7%増の2701億2400万円で、総額は前年度肉付け後を1.2%上回る。

 1定補正を加えた15カ月ベースでは、企業会計が前年度(15カ月予算)比2.1%増の2711億7700万円で、全会計総額は同1.9%増の1兆6896億円となる。

 当初分の一般会計に占める普通建設事業費は1.9%減の978億9178万1000円。これに災害復旧費を加えた建設事業費は2.7%減の1006億6378万1000円で、7年連続の1000億円超えとなる。

 特別会計は3.6%減の4億4989万2000円、企業会計は10.5%増の579億23万円の建設費を措置。これらを含む当初の建設事業費総額は1.7%増の1590億1390万3000円に上る。

 15カ月予算では補正分が加算され、一般会計で前年度比(15カ月予算)7.7%増の1178億8850万3000円、特別・企業会計を含む総額は1763億9162万5000円で8.7%増を確保した。

■強靱化など重点に

 重点は都市の強靱化や子育て環境の充実、都市リニューアルによる魅力向上など4分野が柱。

 北海道胆振東部地震の復旧関連は15カ月で約36億円を措置した。当初の道路等災害復旧費は、土砂流出が起こった清田区里塚地区や約4・2㌔にわたり断続的な陥没や沈下が起きた東15丁目屯田通の復旧を継続。地盤の液状化被害などが判明している美しが丘ほか2地区は、周辺地盤一体の安定化対策を計上した。

 道路や街路改良、公園や河川などインフラの防災機能強化に113億円、学校耐震化に94億円など、防災・減災には15カ月予算ベースで209億円を投入。除雪費は当初で過去最大の220億円を充てる。

 東京五輪の成功を30年の冬季招致につなげるため、五輪・パラリンピック関連に全庁一丸で取り組む。マラソンやサッカー、競歩競技が札幌で開かれる東京五輪の関連費用に8億円を充て、受け入れ環境を充実。30年招致には3億円を計上し、開催概要計画や施設配置計画の更新、機運醸成につなげる。

 第2児童相談所整備は基本計画の策定費を措置したほか、一時保護児童の増加に対応するため、仮設の一時保護施設設置に着手。保育の定員拡大には48億円を措置し、認定こども園や私立保育園で1649人の定員増を目指す。

 多様なコンサートに対応できるように改修する札幌ドームは実施設計に着手。21年度に着工し、22年度までに14億円の事業費を見込む。23年度までに23億円を投じる硬式野球場整備は、モエレ沼公園軟式野球場を改修する方向で基本設計に入る計画だ。

■解説

 秋元克広札幌市長の2期目本格編成は、まちづくりの方向性を示す中期実施計画「アクションプラン2019」に掲げた新規、拡充事業の9割を取り込み「スタートダッシュ予算」と位置付けた。

 国の経済対策に伴い、約178億円を2019年度補正予算に前倒す形で同時編成し、いわゆる「15カ月予算」として20年度に一体運用する。

 当初の一般会計建設事業費は前年度(肉付け補正後)を2.7%下回るが、学校耐震化、道路改良や水害対策といったインフラの防災機能強化など172億円を補正計上したことによる。

 補正を加えた実質的な建設事業費は前年度の15カ月予算比7.7%増の1179億円となり、アクションプランで示した1149億円を上回る規模となる。

 工事請負費は15カ月ベースで1.9%増の653億円を積み上げた。

 更新期に差し掛かり、平準化を見据えた公共施設の計画的な改築・保全費の増額が押し上げている側面はあるが、都市の稼ぐ力をさらに高める「未来への投資」には引き続き力を入れる。

 30年の冬季五輪・パラリンピック招致、新幹線延伸を見据えたJR札幌駅前など都心の再開発誘導、新MICE施設関連整備はその代表例。人口減少と財政バランスを見据えながら、経済活性化で市税拡大など財政力の強化を目指す考えだ。

 特別、企業会計を含む建設事業費の総額は8.7%増の1764億円と、3年ぶりに1700億円を超えた。

 安定的な建設事業費の確保は建設業にとって歓迎すべきことだが、高齢化や人手不足、残業抑制など働き方改革への対応を迫られ、業界内には将来的な受け皿維持を不安視する声は多い。

 市は経営安定化や人材確保支援など持続可能な発展方策を示す仮称・建設産業活性化プランを今春に策定する。実効性のあるものとなり、次の50年、100年を支える都市と産業双方の健全な発展に結び付くことに期待したい。(建設行政部 山本 浩之記者)

(北海道建設新聞2020年2月4日付12面より)

 北海道建設新聞2020年2月4日付8面では、札幌市20年度予算案の箇所付けを掲載しています。

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