建設業界にも波紋
新型コロナウイルス感染症に端を発したマスクの欠品騒動が建設業界にも波紋を広げつつある。一般用マスクの購入機会を逃した客が、ホームセンターや作業用品店などに商品を買い求め、建築・解体の現場で使う簡易防じんマスクが品薄になっている。トンネルなど大規模工事の現場は事務所単位で備品を購入するため、今のところ影響は軽微と見られる。しかし、先々の動向に一抹の不安を抱える会社も少なくない。
興研(本社・東京)は、産業用マスクを製造・販売するメーカー。主にクリーン施設と医療機関、建設現場の3分野向けに商品を展開している。広報・IR室の菊池一誠さんは「1月20日あたりから、中国にマスクを送りたい、新規で取り扱いをしたいといった引き合いが来ている」と話す。
現状、増産体制を取っているが、旺盛な需要に追い付いていない。「医療機関の需要に対応したいが、工場や建設現場などの顧客も待たせるわけにはいかない。メーカーとして社会的責任を感じている」と明かす。
DCMホーマックの各店舗では、連日の新型コロナウイルスの報道が影響し、マスクが入荷してもすぐ売り切れてしまう状態。一般用のマスクと同様に現場用マスクも品薄になっていて、状況が落ち着くかどうかは見通せていない。
ワークショップ「プロノ」を営業するハミューレ(本社・札幌)によると、店頭で産業用マスクが品薄になったのは1月下旬から。食品工場や調理場などで使われる衛生マスクは各店舗とも在庫切れ。建築の軽作業や清掃用の使い捨て防じんマスクも品薄の店が増えているという。
プロノ南郷店の村山訓康さんは「近所の主婦を中心に、ドラッグストアから流れて、うちの店舗にやってきたお客さんが多い。マスク品切れに驚いていた常連の職人さんには申し訳なく思いました」と話す。
企業や現場単位で見ると、産業マスクの品薄影響は今のところ限定的だ。札幌市内の解体会社は「手持ち品を十分確保しているため影響はない。でも先々の動向は心配」と打ち明ける。
安全用品販売の北海道つくし工房(本社・札幌)には「サージカル(医療用)マスクを数百個単位で確保できないか」など、企業からの相談が多く寄せられている。メーカー各社に問い合わせたところ、どこも在庫切れ。黒沢法彦社長は「得意先の注文に応えられず困っている。防じんマスクは品切れにはなっていないが、何より事態が早く収束してほしい」と状況を見守る。
(北海道建設新聞2020年2月5日付3面より)