投資的経費は3900億円 道が2020年度予算案を発表

2020年02月21日 19時14分

茅沼1号トンネル着工、消防学校校舎は実施設計

 道は21日、2020年度予算案を発表した。一般会計は2兆8200億9318万5000円で、前年度肉付け補正後比1.4%の減少。このうち、公共事業などの投資的経費は3813億4648万円、特別会計も含めると3899億5399万円に上り、いずれも伸び率は1.7%増になる。泊共和線の仮称・茅沼1号トンネルの着工を計画するほか、北海道日本ハムファイターズのボールパーク(BP)へのアクセス道路となる仮称・きたひろしま総合運動公園線の新規事業着手も見込んでいる。建築では、北海道消防学校校舎改築に向けた実施設計費を計上した。  特別会計は2.4%減の1兆1120億4815万2000円。一般会計と合わせた総額は3兆9321億4133万7000円に上り、前年度肉付け補正後比で1.7%の減少となる。

 一般会計に関しては、20年度予算案と合わせて第1回定例道議会に提案する19年度補正予算案の1560億円を含めた実質的な20年度執行分は2兆9761億円となり、0.4%減にとどまる。

 一般会計の投資的経費は、補助事業等が「防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」を含めて0.9%減の1940億円、社会資本整備総合交付金事業が23.8%減の195億円、施設等建設事業が6.6%増の382億円となっている。

 一方で、19年度補正予算案も含めた実執行分では全区分で増加する。補助事業等は4%増の2902億円で、社会資本整備総合交付金は22.9%増の393億円となる。

 主な建設事業を見ると、道路では、明かり部を除いて延長338mの仮称・茅沼1号トンネルは3カ年の債務負担行為を設定して着工する。登別港線の蘭法華隧道修繕を20―21年度で実施。増毛稲田線妹背牛橋と泊共和線の仮称茅沼1号橋は上部架設に入る。BPアクセス道路の仮称・きたひろしま総合運動公園線は、第1回定例道議会に道道昇格要望を提案し、その議決を受けて事業着手する見通しだ。

 河川は、小町川(北見市)や置杵牛川(美瑛町)の新規着手を予定しているほか、3カ年緊急対策の最終年度として、望月寒川(札幌市)などの改修を引き続き進める。

 砂防は、茂生1の沢川(石狩市)、大学の沢川(室蘭市)の通常砂防事業や、火山砂防事業で富良野川4号堰堤の整備への着手、小樽勝納など6地区の急傾斜地崩壊対策事業も新規要望している。津波・高潮対策で野塚海岸(積丹町)、栄海岸(函館市)の着手も計画している。

 建築関係を見ると、教育施設では工事で高校の大規模改造が14校、特別支援学校は大規模改造9校、新設と増築が各1校を実施。設計は高校の大規模改造3校、改築2校、産業教育施設1校を進める。このほか、北の森づくり専門学院の本体工事、新道議会庁舎の完成に伴う旧庁舎解体工事費、北海道百年記念塔解体の実施設計費を措置する。

 災害復旧費は97億6099万円を予算化する。このうち過去の災害に対応する過年分は79億286万円、20年度の災害に備えた現年分は18億5812万円となっている。

 北海道胆振東部地震関連の対策予算は、19年度補正予算を含めると112億円に上る。公共土木施設では、日高幌内川や厚幌ダムの復旧を促進する。

 投資的経費の補助事業費で予算額が多い農業農村整備では、道営事業で北美唄地区(美唄市)や川西西2地区(帯広市)などの事業を進める。

 就任後初となる本格的予算を編成した鈴木直道知事は、21日の定例記者会見で30年度までのロードマップを示し、「成功の連鎖を生み出していく」と強調。その起点となる20年度予算案を「新交流時代、離陸への予算」と名付けた。

 20年度予算案は「新交流時代を見据えた政策展開」という考え方で編成。①連なる好機②課題解決に向けた挑戦③多様な連携④未来の創造―の4つ視点で、東京2020オリンピック札幌開催を契機としたチャンスとレガシーの創出、国土強靱化の推進、Society5・0時代に向け未来技術を生かした産業振興と地域活性化など14の重点政策を上げた。

 ■解説■
 防災・減災、生産基盤に注力

 道の2020年度一般会計予算案に盛り込まれた投資的経費は3813億円で、前年度肉付け補正後予算と比較すると1.7%増加した。さらに、同時提案する19年度補正予算を含めた15カ月予算で考えると、7.1%増の5077億円にまで膨らみ、06年度以来、5000億円を超える。

 前年度の15カ月予算には「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」として18年度補正予算で1年目、19年度当初予算で2年目分を計上。2年間で875億円が措置され肉付け補正後には大幅な増額予算になっていた。

 一方、今回の15カ月予算は、緊急対策の最終年度としては353億円と3年間で最も少ないものの、国の経済対策に伴う19年度補正予算案として1264億円が上積みされることで、前年度以上の投資的経費が確保される見通しになった。

 国の経済対策は、TPP11や競争力強化に向けた農林水産業の基盤整備に充てられるほか、昨年本州を襲った台風災害で河川の堤防決壊や氾濫が多発したことなどを受けて、防災機能を向上する事業が中心となる。

 いずれもインフラの脆弱(ぜいじゃく)性が指摘され、日本の食料供給基地である本道にとって必要不可欠な施策で、今回も農業農村や水産基盤、河川整備などに手厚く措置された。

 前年度に続き伸びた投資的経費。しかし、こうした投資的経費の増加傾向は手放しで喜べる状況でもない。鈴木直道知事は21日の予算発表で「道の財政は47都道府県で最悪の状況」とし、この危機感を全道で共有し、事業にメリハリを付け、新規道債発行の抑制など実質公債費比率改善に取り組むとコメントした。

 対象や具体的な手法については触れなかったが、20年度中に次年度以降の財政健全化の方向性を示すことは明言。公共事業の行方を注視していく必要がある。

 20年度予算案の重点政策には、東京オリンピック札幌開催を契機とした本道PRや活性化、北海道ブランドを生かした海外戦略、生涯元気に活躍できる社会・環境の創出など14件を掲げた。

 ただ、これらの政策は全て災害に強い大地を築き、揺るぎない生産基盤が根底になければ達成できないことを忘れてはならない。

 (建設・行政部 佐々木 潤記者)


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