新型コロナウイルスによる感染が、全国的に広がりつつあります。まだワクチンや特効薬が開発されていない現状では、いかに感染を防ぐかが大事になります。このウイルスの感染様式は、飛沫(ひまつ)感染と接触感染が主要なものとされています。ウイルスに感染した人がせきやくしゃみをしたときに、ウイルスが含まれた唾液やのどの粘液が飛沫となって飛び出し、周りの人に降りかかるのが飛沫感染です。加えて、人がしゃべったり、呼吸をしたりしているだけでも、吐く息の中に細かい飛沫が含まれているので、これも感染の原因となります。飛沫感染を防ぐには、最低1m、できれば2m以上離れることです。飛沫はそれ以上届かないからです。
接触感染は、感染している人が、飛沫が付いた手でいろいろなところを触ると、ウイルスが付着し、そこを別な人が触って手に移り、その手で口や鼻の周りを触ることで起こります。したがって、不特定多数の人が触る可能性がある、電車やバスのつり革、手すり、自動販売機やエレベーターのボタン、エスカレーターの手すりなどを触ると感染を起こす危険性が高まります。
このため、飛沫感染と接触感染が起こる危険性が一番高いのは、人混みにいることと言えます。しかし、直接、せきやくしゃみを浴びず、不用意にいろんなところを触らなかったとすると、感染の危険性は大きく下がると思われます。
一方、感染者と一定時間長く、1m以内に近づいて、会話をしていると飛沫感染の危険性が高まります。この状態を濃厚接触といいます。接触の時間はどのくらいかというと、明確な基準はないのですが、研究者の意見では、30分以上とされています。だとすると、人通りの多いところを歩くぐらいでは、感染の危険性はほとんどありませんが、ラッシュ状態の電車やバスの中にいるのは、濃厚接触を成立させて危険性が高くなるということです。
新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザや普通のかぜも流行している時期です。せきやくしゃみが出る人は、飛沫を飛ばさないよう、マスクを着用していただきたいと思います。完全ではないですが、飛沫感染の危険性はかなり低くなると考えられます。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)