ノボシビルスク シベリアのビジネス発信地

 北海道企業が、ロシア中部、シベリア地方のノボシビルスク州に注目し始めた。理数系の研究・教育機関が集積する同州は、高度人材の輩出地、新ビジネスの発信地としてロシア国内でも評価が高い。

 本道との間で今、何が生まれようとしているのか。筆者が1月下旬に参加した北海道経済産業局の現地調査を踏まえ、最前線をレポートする。(北海道国際交流・協力総合センター客員研究員/本紙経済産業部 吉村慎司)

ノボシビルスク シベリアのビジネス発信地(中)旧「秘密の街」が急成長

2020年03月11日 12時00分

コリツォボ市、建造物続々

 ノボシビルスク市中心部から車で約40分。シラカバの森の中に、新築建造物が続々と出現する街がある。人口は2019年1月時点で1万7400人。過去5年間の増加幅は約3000人に及ぶ。ロシア政府が支援するバイオ・生命科学の研究都市、コリツォボ市だ。

 気温マイナス20度を下回った1月30日。同市内で建設が進む公立小中高一貫校を訪ねた。案内役は、設計・施工を担った地元の老舗建設会社「プロスペクト」のモナガロフ・ウラジーミル社長だ。4月開校予定で、今は内装の仕上げ段階という。

 校舎を歩くと、多くの教室に75インチのタッチパネル液晶が設置されていた。玄関にはICカード読み取り端末付きの真新しいゲート。生徒の登下校を保護者にリアルタイムで知らせる仕組みだ。バリアフリーを意識してあちこちにスロープを施している。モナガロフ社長は「建設費は通常の2倍。これができるのは国からこの街への資金支援があるから」と話す。

 学校は市内で3校目となる。住民の平均年齢は30代前半。出生率が高く、子どもが増えていることを受けての開校だ。

 住宅ニーズも高い。学校建設現場の近くで、カラフルな出窓が特徴的な中層マンション群が姿を現していた。設計・施工はノボシの建設会社「アカデ」だ。マキシム・ペトロフ社長によれば、17haの敷地に約1200戸を建設。延べ床面積は9万m²になるという。販売価格相場は1m²当たり6万ルーブル(約10万円)で、ノボシ中心部と比べて3割程度安い。案内された棟は今夏に入居開始予定という。工事の進ちょくはまだ3割程度だが、全戸の7割は契約済みだ。

アカデ社の中層マンション建築現場

 活気の裏で、街は独特の過去を持つ。かつてこの地は、東西冷戦を背景とする「地図に載らない街」だった。1974年、ソ連政府が極秘裏に生物学研究所を開設し、職員用住宅を造ったのが始まりだ。5年後の市政開始で街の存在は公になったが、細菌研究など軍事機密を理由に無許可の立ち入りが禁じられた。

 冷戦終結で流れが変わる。94年、研究所は今に続く「国立ウイルス生物工学研究所」(VECTOR=ベクトール)に改組。行政関係者や研究者たちは、研究所が生み出すバイオ分野の成果を基に、ビジネスの創出を目指すようになった。市は03年、国から「研究都市」に指定され、種々の資金支援を受けるようになる。同じタイミングで、誰でも出入りできる開かれた市に生まれ変わった。

 今日のコリツォボは、学術研究とスタートアップビジネスの街だ。起業支援や事業育成施設が充実し、医薬品や医療器具の分野では輸出企業も出てきた。

 力を付けた企業は地元の官民組織「バイオファーム協会」に所属し、ビジネスや技術の情報を共有する。協会は行政、またベクトールを含む8研究機関、民間50社強で構成する。市内企業・団体の総売上高は18年実績で117億ルーブル(約200億円)と、16年から23%拡大した。同じ期間に従業員数も約2割増えた。

 実はこの街で、「北海道」は一定の知名度を持つ。経産局職員がこれまで調査で複数回訪れたことに加え、昨年12月には、コリツォボの事業育成施設の職員ら4人が自主的に来札し、本道企業を視察する出来事があった。人の往来が生じている。将来、シベリアの成長都市と巧みに連携する道内企業が現れるかもしれない。

(北海道建設新聞2020年3月6日付3面より)

e-kensinマップで見る「シベリアのビジネス発信地」

コリツォボ(Кольцово/Koltsovo)↗


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