「ドローンで牛追い」 ICTで地域の課題を解決

2020年03月14日 10時00分

総務省のICT地域活性化大賞 豊富町振興公社など5者が優秀賞に

 総務省は、ICT(情報通信技術)を活用した地域課題の解決を模索する「ICT地域活性化大賞2020」の受賞者を決めた。大賞の総務大臣賞は、情報整備局(本社・福島県須賀川市)による「消防団員が考案した消防団のためのICTソリューションアプリ」。道内からは豊富町振興公社やNTTドコモなど5者による「ドローンで牛追い〝スカイカウボーイ〟」が優秀賞に選ばれた。神恵内村などによる陸上養殖の取り組みは奨励賞に入った。

 情報整備局のアプリ「S.A.F.E.(セーフ)」は、地域防災の中核を担う消防団員の活動をサポートするツール。消防団は地元有志によって組織され、消防署員の約5倍に当たる85万人が全国に存在する。

 一般的には、火災が発生すると消防署から消防団幹部に連絡が入り、さらに幹部から消防団員に連絡が入る流れで動く。ただ、多くはサラリーマンのため日中など地元におらず、近年は即時対応力の低下が課題だった。

 同アプリは、そうした課題を解決するために開発。サイレンのような音を鳴らして火災発生を通知し、アプリを開くと火災発生現場と消火栓、防火水槽の位置を地図上に示し、一目で状況が分かる。補助線を50m間隔で表示していて、1本当たり20mの消防ホースを何本中継すれば良いか分かりやすい。

 2018年から福島県内で導入され、通知の早さから人災の防止に一役買っているという。今後は全国展開を視野に入れている。

 豊富町振興公社などのスカイカウボーイは、ドローンと音声を使った上空から牛追いをするシステム。牛追いは健康状態のチェックや雌牛の発情状態を確認するため、パドックと呼ばれる30―50m四方のエリアに牛を集める作業。1日に1回するが、牧草地のため起伏が多く、牛や餌を傷つけないよう車両は用いず、従来は2人一組で歩いて誘導する体力仕事だった。

 開発したシステムでは、スピーカーを搭載したドローンを使い、遠隔から牛追いを実施。ドローンは小型カメラを備え、作業者はスマートフォンの画面から映し出される映像を見て、遠隔からドローンを操作する。スピーカーから犬の鳴き声や救急車のサイレン音を流すことで、牛をパドックに追い込む。

 これまでは2人で40―50分かけていたが、1人で5―10分で済むようになり、作業員の身体的負担の軽減を実現した。システム導入費はドローン一式で約29万円、操縦用スマホで約3万―5万円と比較的安価。今後は、ドローンの自動飛行による自動牛追いも研究する考えだ。

 神恵内村は、漁業の再生に向けた新たな取り組みとして、ICTを活用したウニやナマコの陸上養殖を研究している。富士通デザイン(本社・川崎市)の養殖管理システム「Fishtech」を使って育成ノウハウを見える化し、作業分担を実現。生体の特性を踏まえた水質管理で、複数種を同じ水槽で養殖することもできる。今後は年商5億円規模の新産業に成長させたい考えだ。

(北海道建設新聞2020年3月12日付3面より)


関連キーワード: ICT ドローン 地域振興 水産 畜産

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