長期化も正確な情報を
道内建設業の2019年倒産件数は前年比6件増の42件となり、2年ぶりに増加した。そうした中、新型コロナウイルス感染拡大が企業活動に影響を及ぼし始め、今後の業績悪化が懸念される。帝国データバンク札幌支店の篠塚悟情報部長に近年の倒産状況や感染拡大による景気の先行きなどを聞いた。
―建設業の倒産状況は。
年間ベースでは18年が大きく減少したため、19年は若干増加に転じたが、件数は落ち着いた動きだった。秋口以降は建設業に限らないが、倒産や連絡が取れないといった問い合わせを受けて現地に赴くケースが増えている。そういう意味では潮目の変化を感じつつある。建設業は土木工事業よりも戸建て住宅建築にかかわる倒産が多い。負債額でいうと1億―5億円前後で、同業との競合が業績悪化を招いている。10%の消費増税以降は住宅購入のマインド低下も逆風になっている。
―どういった要因での倒産が多いのか。
人件費や資材価格の高騰で、会社の規模が小さいほど負担が大きくなっている。ここ数年は人手不足を背景とした倒産が増加傾向にあるほか、後継者難による倒産が断続的に発生している。大手の建設業者がいきなり倒産するということは想定しにくいが、小規模企業の倒産は増える可能性があるだろう。
―新型コロナウイルスの影響は。
道内でいえば、大きな影響が出たのがインバウンド関係だ。本道の個人消費がやや弱く、インバウンド消費がカバーしてきた側面もある。国内での感染拡大によって、これまで影響の出ていたホテル、飲食店、観光バス、小売などにとどまらず、幅広い業種にマイナスの影響を及ぼし始めた。新型肺炎の影響で倒産する企業が全国で発生していて、道内も集客力が落ちたことで倒産するケースが出ている。もともと業績が厳しい企業は、今回の騒動が最後の一押しとなってしまうことはあるだろう。
―建設業に影響は出るか。
弊社が道内企業に対し実施した新型肺炎に対する意識調査で、「資材の入荷・納品遅れ」「メーカーからの注文停止」「工期の延長をお願いしなければならない」といった声が挙がった。建設業者は「マイナスの影響がある」との回答が1割台にとどまったが、「今後マイナスの影響がある」は3割近くに上る。インバウンドなどの需要を見込んだ建設投資が冷え込めば、その影響は不動産に及ぶ。技術者などの就労や移動制限がかかった場合の影響を懸念する声も出ている。
―景気の先行きをどう見るか。
経済への打撃をリーマン・ショックなど過去のケースと比較されることがあるが、金融危機と違って、今はサービスや消費などの需要そのものが落ち込んでいる状態だ。終息時期が見えてこない現状にある。さらに長期戦になるとの見方が示される中、このタイミングで事業をやめる決断をする企業が出てきてもおかしくはないだろう。
ただし、過度な自粛や風評被害によって必要以上に経済活動を冷え込ませるようなことがあってはならない。そのためにも正確な情報が求められている。
(聞き手・武山 勝宣)
篠塚悟(しのづか・さとる)1971年生まれ。金融機関を経て、98年に帝国データバンクに入社。2015年4月から現職。
(北海道建設新聞2020年3月13日付2面より)