道は20年度当初予算案に解体実施設計費計上
完成からまもなく50年を迎える北海道百年記念塔[MAP↗]に、解体の足音が近づいている。道は2020年度当初予算案に、解体の実施設計費として1284万円を計上。夏ごろまでには発注し、早ければ21年度に着工するスケジュールを描く。一方、建築家有志で構成する「北海道百年記念塔の未来を考える会」は塔の建築物としての価値を重視し、取り壊しに固執する道への反発を強めている。先住民に配慮した塔名への変更や内部視察を要請し、解体方針の見直しを求める考えだ。(建設・行政部 塚本 遼平記者)
1970年7月に完成した百年記念塔は近年、外壁パネルの穴開きやさび片の落下が確認されている。このため、道は18年度に有識者らを交えた検討会議を経て取り壊しを正式に決定。解体材の有効活用も視野に入れ、跡地に新たなモニュメントを設置することとした。
■解体への理解図る
道が20年度当初予算案に計上した百年記念施設再編関連の事業費は1820万円で、このうち約7割を塔解体の実施設計費に充てる。また、プロポーザルやコンペといったモニュメント整備方法などの検討に向けて103万円を措置する。
塔を所管する環境生活部は解体の実施設計に先立ち、塔の思い出や記憶の保存に関して具体的な方向性を提示する。担当者は「活用のイメージを示すことで取り組みを分かりやすく伝えたい」と話し、解体への理解を促す考えだ。
■塔名変更で保存を
一方、「考える会」は解体が拙速だとして道に計画の再考を求めている。19年12月には、塔設計者の井口健氏を含む計37人が連名で知事宛の公開質問状を提出。塔を支える鉄骨自体の損傷は限定的だとし、解体を進める技術的な根拠の開示などを要求した。
道が環境生活部長名で寄せた回答では、17年に民間事業者に委託した調査の結果に基づき、外皮が腐食した記念塔の維持管理には高額な経費を要すると主張。「十分な議論を踏まえてきた」とし、解体方針は変更しない意向を示した。
道の回答や予算措置を受けて「考える会」は今後、塔の名称を変更して保存を図るよう提案する予定だ。設計時、塔に隣接して先住民慰霊施設を建設するという井口氏の構想が道の予算不足で見送られた経緯とともに、「塔は先住民への敬意を欠く」との批判も踏まえ、「北海道大地塔」など未来志向の名称とするよう知事に要請する。また、構造躯体の損傷状況などを精査するため「考える会」が塔内部を調査できるよう申し入れる方針だ。
竣工から半世紀で歴史に幕を閉じようとしている百年記念塔。存廃を巡って意見を異にする両者が議論の場に立ち、双方が納得するような着地点を見いだせるのか。塔はその行方を静かに見守っている。
(北海道建設新聞2020年3月13日付1面より)
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