下水熱の融雪効果十分 実用化へ研究深化

2020年03月17日 12時00分

伊藤組土建などが研究効果まとめる

 伊藤組土建などで構成する「さっぽろ下水熱利用研究会」は、北海道科学大で2017年冬から進めている下水熱を利用した路面融雪実証研究の効果をまとめた。採熱管で集めた熱をヒートポンプで昇温する融雪システムは、熱流束の平均値が1m²当たり299㍗と札幌市の設計基準を上回り、車道や歩道を融雪する効果が十分なことが分かった。今後は、融雪範囲を歩道部に広げたり、運転制御を最適化するなど研究を深化させながら実用化や普及につなげたい考えだ。

融雪範囲を歩道部まで広げ、実用化に向け21年まで検証する

 研究会は、新潟や青森など東北を中心に導入が進む下水熱利用の路面融雪について、気象状況の厳しい道内でも導入の可能性がないか探るため17年に発足。伊藤組土建を代表者に道科学大、積水化学工業、TMS工業、東亜グラウト工業、山田組、ゼネラルヒートポンプ工業で構成し、札幌市下水道資源公社がアドバイザーを担う。

 下水熱は年間を通じて15―25度を保ち、夏は涼しく冬は暖かい安定した再生エネルギーとして注目されている。国も下水熱利用の普及拡大に乗り出し、15年度は下水道法を改正。民間事業者による下水道管へ熱交換器の設置を認めた。

 実証試験は17年から道科学大構内にあるバス停乗り場前と案内板前の歩道部の2カ所で始めた。バス停前は循環ポンプによる融雪システムを試行し、案内板前はヒートポンプを併用した融雪システムを組んだ。

 循環ポンプ使用システムは、下水道管の底に設置した採熱管によって下水から熱を集め、管内の不凍液を循環させながら路盤の放熱管へ送り込む仕組み。ヒートポンプ併用システムは、少ない熱エネルギーで済むときは循環ポンプ単体で雪を解かし、たくさんの熱エネルギーが必要なときはヒートポンプを併用し路盤を温める。

 19年3月までの実証試験の結果、循環ポンプ使用システムの熱流束は平均76・2㍗、ヒートポンプ併用システムは299㍗だった。循環ポンプ使用システムはバス停など小規模の範囲に効果を発揮。ヒートポンプ併用システムは札幌市の設計基準を満たし、車道部など確実な融雪が求められる箇所に適用できることが分かった。

 今後は実証期間を2年延長し、札幌市内での車道ロードヒーティング改築需要を視野に、実用化に向けた研究を深化させる。システムはヒートポンプ併用に絞り込み、大学前歩道部の35・9m²まで融雪範囲を拡大。ヒートポンプ施設をコンパクトにしたり、札幌市と同じ運転制御方式を採用するなどし、コストの検証や維持管理上の課題などを21年までにまとめる。

 現状の初期コストは電気やガスボイラ式の車道ロードヒーティングに比べ3倍。しかし、運転コストは電気式より極めて安いため、総合的なコストメリットは設置後13年ほどで出ると試算する。

 プロジェクトを統括する伊藤組土建の坂田和則常務執行役員は「2年間の研究で、下水熱利用の路面融雪が道内でも有効なことが分かった。新たな札幌市の雪対策となるよう、早期の活用を目指したい」と話している。

(北海道建設新聞2020年3月14日付3面より)


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