深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り エムリンクホールディングス 本見研介社長

2020年03月18日 09時00分

本見研介社長

小規模・多機能こだわり

 オホーツク地域を中心に道内で福祉施設などを運営するエムリンクホールディングス(本社・北見)は、1月に子ども未来事業部を立ち上げた。札幌市内の高齢者施設に小規模保育所を併設し、さまざまな機能を持たせる「パッケージ化」を進めている。本見研介社長に狙いや今後の展開を聞いた。

 ―事業の進ちょく状況は。

 札幌市中央区で他の法人が運営するサービス付き高齢者向け住宅・小規模多機能型居宅介護施設内に、3歳未満の子どもを受け入れる小規模保育所を1月に開設した。

 江別市内では小規模多機能型居宅介護施設、有料老人ホーム、小規模保育所、病児保育室を1つの敷地内に集約した施設建設を進めていて、5月に全面オープンする。

 ―高齢者施設と保育施設を併設する利点を。

 福祉と経済は伴走型で共に成長しなければならない。経済を成長させるためには現役世代に一生懸命働いてもらう必要がある。そのためには、親の介護といった気掛かりを減らすことが重要と考え、高齢者の受け入れ先となる事業を展開してきた。

 これは子どもにも当てはまると感じた。待機児童が多い3歳未満の子どもを受け入れる施設が増えれば子育て世帯の不安を除ける。

 介護、保育など地域に必要なサービスを1つの「パッケージ」にすることで課題をまとめて解決できる。極端な話、親の介護が必要な子育て世帯が、親と子どもを1つの施設に預けられるなら、こんなに良いことはない。

 運営する施設のサービス、安全性向上も期待する。高齢者施設と比較して空気中の有害物質量や調理場の衛生管理など保育施設に求められる法律上の基準は厳しいことが多く、その逆もある。セットで設置しているからこそ、それぞれの基準の良いところを取り入れたい。

 利用者目線で考えると地域内の交流が希薄になったこの時代に高齢者と子どもが気軽に交流できれば、双方の心が豊かになることが考えられる。

 ―今後どう展開するか。

 江別市内の施設のうち小規模保育所と病児保育室は、地元小児科に建設してもらい、運営は高齢者施設も含めてエムリンクホールディングスで進める。医師の診断が必要な病児保育室は、その地元小児科を通して受け入れるなど地域内で連携する。

 この施設を絶対に成功させたい。これをモデルとし、全道の市町村に売り込む。広い北海道では高齢者、子ども、障害者などサービスのニーズも地域によって幅広いため、今まで展開してきた事業範囲を生かしながら求められたパッケージを用意する。

 ―具体的には。

 「小規模」と「多機能」にこだわり、民間企業ならではのフットワークを生かし、必要な施設を必要な地域に設置している。時代のニーズは常に変化する。小規模であるからこそ身軽な用途変更も可能になり、常にその地域の課題をクリアする施設にしたい。

 建設から用途変更の改修、パースの書き出しなど地元建設業者の協力も必要と感じている。スピード感を持った上で整備コストを縮減させるには施設を自社で所有するのではなく、リースバック方式での賃借などが有効ではないかと考えている。

(聞き手・宮崎 嵩大)

 本見研介(もとみ・けんすけ)1962年札幌市出身。東京福祉大心理学部を卒業し、札幌の建設コンサルタント会社で勤務後、2002年に佐呂間町でエムリンクを設立。地域に必要とされるさまざまな福祉サービスを展開し、15年にホールディングス化した。


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