技能競技部門での道内選手の優勝は12年ぶりの快挙
2月下旬に静岡県で開かれた第42回全国建築板金競技大会技能競技の部で、梨木工業(本社・苫小牧)の古市友之さんが2回目の出場で1位を獲得した。道内選手が同部門で優勝するのは12年ぶりの快挙。「満足のいく作品ではなかった」と話すが、大会出場を通して後進の育成という新たな目標が見つかった。

1位を獲得した古市さん(右)と梨木社長
大会は、制限時間内に課題を製作する技能競技の部と、製図する建築技術の部の2部門。古市さんが出場した技能競技の部の今回の課題はトロフィーで、4時間以内に展開図と銅板製品を作る。
古市さんは昨年も技能競技の部に出場。課題である片手桶(おけ)を製作し、結果は8位だった。今回はその悔しさをばねに見事日本一に輝いた。
昨年4月に課題が発表され、5月には札幌で先輩技能者から製作のポイントを学んだ。年が明けてからは毎日練習に明け暮れ、1日に12時間訓練し、60個ほどのトロフィーを仕上げた。ただ、制限時間内に仕上げることができるようになったのは、大会の1週間ほど前になってからだという。
古市さんは「作品の仕上がりはミリ単位で計って審査されるが、昨年は精度が甘かった。ことしはその部分をしっかり対策した」と回顧。「満足のいく作品は作れなかったし、入賞も危ういかと思ったが、今回は他の出場者も難しそうな様子だった。練習を重ねないとできないレベル」と続ける。
梨木仁社長は「やるからには1位を取ってほしいと思い、古市さんが現場に出なくてもいいように仕事を調整し、社員みんなで支え、この大会に向き合った。全員が自分のことのように喜んでいる」と話す。
2度の大会出場を通して、古市さん自身の気持ちにも変化があった。「大会に出場している人は、例えば技能競技の部で優勝して、次は建築技術の部で優勝を目指しているとか、向上心の塊という感じ。そうした人を見ていると、技術を自己満足で終わらせるのではなく、人に伝えなければいけないという思いに変わった。これからは全国大会に出場する選手を育てることが目標」と先を見据えている。
梨木社長は「古市さんが後進を育成し、その後進が今度は日本一を目指してほしい」と期待。さらに業界全体で「1級、2級の技能士が増えることが住宅産業の品質向上、業界のレベルアップや発展につながる」と展望している。(苫小牧)
(北海道建設新聞2020年3月26日付13面より)