深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り テレワークマネジメント 田沢由利社長

2020年04月06日 09時00分

田沢由利社長

企業、働き手 双方に利点

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、ビジネス界で在宅勤務がにわかに注目されている。在宅勤務はITを活用して時間や場所にとらわれず働く「テレワーク」の一形態。東京に拠点を持つ北見のコンサルティング会社、テレワークマネジメントの田沢由利社長は、10年以上前から在宅勤務を提唱してきた。新たな働き方を巡る現状と導入の利点、課題を聞いた。

 ―テレワークはIT企業でこそ多いが、産業界全般ではあまり注目されていなかったのでは。

 働き方改革など社会の変化を受けて、在宅勤務に関心を持つ企業は以前から増え続けていた。特に東京の大手企業は、今夏開催予定だった東京五輪・パラリンピックをきっかけに多くの業種で本格的な準備を進めていて、当社もそのお手伝いをしてきた。今回のコロナ危機で、関心が全国の中小企業に至るまで一気に広がりそうだ。

 ―今や本道の中小でもテレワークの検討が相次ぐ。まず最低限導入すべき設備は何か。

 設備や費用のことを最初に知りたがる方が非常に多いが、その前に重要なことがあると申し上げたい。第一に検討すべきは導入の目的。どのようなメリットを享受するためにテレワークをするのか明確にすることが重要だ。例えば特定の社員が退職しないで済むことが目的なら、用意すべきは、PC1台とインターネット環境で十分かもしれない。

 ―一方、ビデオ会議システムなど設備投資を要する場合もあり得る。

 その場合でも大きな投資は不要だ。私がいまお薦めしているのは「Zoom」というネットのビデオ会議システム。品質が安定している上、無料で40分まで使える。有料契約しても、プランにもよるが1カ月2000円前後と低い。これに限らず、いまどんなツールが使えるかは押さえるべきだろう。

 ―コロナ対策をあえて脇に置くと、そもそも企業経営にとってテレワーク導入の利点は何か。

 さまざまだが、昨今の人手不足から言えば、社員の退職を防ぐ手だてになる点が大きい。家庭の事情などでこれまで通りの出社ができなくなる社員にも仕事を続けてもらえるからだ。別の見方をすれば、離れた地域に住む優秀な人を雇う選択肢も出てくる。企業にも働き手にも利点があるのがテレワークだ。

 ―最近在宅勤務にした企業からは、怠惰になりがち、また社員間コミュニケーションが減るなどの課題も聞こえる。

 全員が自宅で自分を律して働けるわけではなく、やはり工夫は必要だろう。私の提案は、ネットのビデオ会議システムを使った「クラウドオフィス」だ。通常の会議のように特定の議題を話すために接続して終わったら解散するのではなく、就業時間中は全員がネット上の会議室につなぎっぱなしにする。各自の存在を感じつつ、気軽に声掛けもでき、会社にいるのと近い状態になる。何かに集中したいときはそのときだけ音を切ったり、個別に話したいことがあればネット上に別途会議室を設定したりすればよい。

 ―テレワークは社員宅の机やネットを使うため、会社は新たな手当て類を出す必要があるのでは。

 頻度によるが、手当てを出す企業は増えている。1人数千円レベルが多い。経営側から見れば、それ以上に通勤費負担を減らせる。オフィスも大きな面積がいらないため、賃料も安くなる。会社にとってのメリットは明らかだ。

 ―自宅で働く人が増えると、住宅の在り方も変わるか。

 7年前、戸建て向けにミサワホームが売り出した小部屋「ミニラボ」を監修したことがある。リビング横に設けるオプション商品で、防音効果があり、仕事をしながら小窓から子どもの様子を見ることもできる。当時は市場が熟していなかったが、こうした商品は今後必要とされるだろう。

(聞き手・吉村 慎司)

 田沢由利(たざわ・ゆり)1962年8月奈良県生駒市生まれ。85年上智大卒、シャープ入社。出産、夫の転勤のため退社後、98年に北見で在宅職員によるIT企業ワイズスタッフを創業。2008年にテレワークマネジメントを設立。北見在住。

(北海道建設新聞2020年4月3日付2面より)


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