Zooops Japanが今春から
IT企業のZooops Japan(本社・東京)が、この春から斜里町でヒグマのAIカメラの実証実験を開始する。同社は以前から町内でテレワークを実施しており、町スマート定住推進協議会のメンバーにも入っているなど、つながりが深い。獣害という地域の課題解決に向け、渡部佳朗社長は「AI画像認識技術とIoT技術を駆使し、観光地の安全性向上と農業被害の予測に貢献していきたい」と意気込んでいる。
クマは知能が高く、侵入防止柵を設けても、柵の下を掘ったり、柵をよけたりして小麦畑に入る被害が出ている。このため実証実験では、クマかそれ以外の動物を認識できるカメラを複数箇所に設置。給電にソーラーパネルを活用し、クマを検知すると役場や関係機関などに注意喚起のメールを送るシステムとなっている。
2015年から同町で始めたテレワークで、ヒグマの被害に悩む町民の声を知ったことが開発のきっかけ。「斜里ではクマと人の共存が一つのテーマ。次世代に斜里の魅力を残したいと考えている人が多く、その思いに共感した」(渡部社長)。
実験期間は冬眠前の10月までを予定。出没時間や出没時の天候状況などのデータを積み重ねることで、漁獲量や農作物の収穫状況との因果関係が見えてくるという。
獣害被害防止に向けた有効な手だてとして期待される一方で、課題もあり、渡部社長は「現在は試作品なので、雨や風などに耐える能力があるか、検証する必要がある」と指摘する。今後については「全道で獣害情報の見える化と共有化を実現したい。ICT産業と親和性の高い業界は多い。人材不足の解決など、さまざまな業界の発展に貢献していければ」と意欲的に話している。
(北海道建設新聞2020年4月6日付15面より)