おとなの養生訓

おとなの養生訓 第181回「睡眠の意義」 脳疲労を清掃する役割

2020年04月10日 08時00分

 一日の仕事が終わって、風呂や食事を済ませて、やれやれと床に入る。もちろん、就寝の時間は人それぞれですが、みんな毎日、確実に眠気が来て、眠ろうとします。もちろん、眠たくなるから寝るのですが、なぜ、毎日眠らなければならないのでしょうか。

 睡眠の意義は、眠らなかった場合にどうなるかを観察した研究により明らかになります。最長で11日ほど眠らなかったという研究があります。その間の症状は眠気、倦怠(けんたい)感、妄想、そして記憶障害、視力低下と報告されています。その後、15時間ほど眠り続けて、目が覚めてから、身体に障害は残さなかったといわれています。

 つまり、眠らないと脳の働きは低下しますが、他の体の機能には影響がないということです。これから分かることは、睡眠は脳を休息させるためにあるのだということです。体に問題がなくても、脳にトラブルがあれば深刻であることは言うまでもありません。人は脳を最大限に使って生きているからです。ただ、寝不足だけで死んだりすることはなさそうです。

 脳は目が覚めている間は、常に大いに働いています。ものを見たり、音を聞いたり、匂いや味を感じたりしているときは、脳の担当部分が活動し続けます。もちろん、ものを考えていたり、テレビや読書をしたりしているときも、脳は盛んに働いています。なので、脳には一種の疲労がたまり続けていると考えられるのです。この疲労を解消するためには、脳の活動を低めて、その間に脳の疲労を「清掃する」必要があるのです。それが睡眠という行動です。

 脳の疲労を取るのが目的なので、睡眠は必ずしも長くなければならないわけではありません。疲労の取れ方は、人それぞれで異なると考えられるからです。1日の睡眠時間が8、9時間必要な人もいますし、3時間で大丈夫という人もいるのです。

 さらに、昨日、10時間寝たから、今日は4時間でいいということはなくて、今日の起きている間にたまった疲労は、その日のうちに取るべきなのです。いわゆる「寝だめ」はできないものと考えてください。一方、寝不足は、疲労を翌日に持ち越すことになるので、蓄積されていくと考えられます。これを睡眠負債と呼びます。

 毎日、疲労の負債を解消するために、一定時間以上の睡眠を確保するべきです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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