不動産にもコロナの影
新型コロナウイルスの感染拡大が道内の不動産投資に影響を及ぼしつつある。インバウンドの減少によりホテルや商業で出店・建設計画を見直すケースが出てきた。日本不動産研究所の妙摩健一郎北海道支社長代理にマーケットの現状や見通しなどを聞いた。
―感染拡大による道内不動産投資への影響は。
この状況がいつ収束するか分からないため、物件取得や開発などをひとまず落ち着くまで保留しようという動きが出始めている。中には今後、新築するビルに出店を考えた事業者が、新型コロナの影響でやめるケースがあった。また、テレワークを導入する企業が増えたことで、スピード感がなくなっているように感じる。
ここ数年のインバウンド増加などを背景にホテルや商業ビル、土地などを取得するケースが多く見られたが、今後はリスクを考え、立地・用途などの選別、不動産収支を厳しく見ることなどで価格が下がる不動産が出ると予想される。
―インバウンドの減少で道内のホテル稼働率が下がっている。
札幌市内のホテルは、ここ1、2年で数千室の供給があった。インバウンドが増加傾向で推移すれば大きな影響はないが、この規模で増えると収支は今までのように右肩上がりで推移しないと聞く。こうした中で今回の新型コロナ騒動となった。観光客を主なターゲットにホテル建設が相次いだ札幌のススキノや中島公園、地方だと函館で経営が厳しくなるかもしれない。
観光は閑散期だが、春の大型連休から夏休みにかけて国内旅行者が道内各所へ訪れるシーズンとなる。今のままだと営業できないホテルが出てきてもおかしくない。道内外で営業をいったんやめている宿泊施設もあるだけに予断を許さない状況にある。
―道内のホテル投資は落ち込むのか。
景気の先読みができず人の動きも鈍化している中で、状況が悪化すれば一気に落ち込む可能性はある。しかし、北海道は国内外から観光地として注目されていることから、中長期的に見れば継続的なホテル投資が戻ることを期待している。
―オフィスへの影響は。
相対的に少ないとみている。ホテルや商業と違い、入居企業が直ちに家賃を払えなくなり、不動産収支が合わなくなるとは考えづらい。本道の場合、新規供給が限定的であり、大きい床を使うのはコールセンター中心のため、市況は維持されるのではないか。東京のマーケットが崩れない限り、北海道まで影響は出ないとみている。
一方、国が進める働き方改革や緊急事態宣言に伴うリモートワークが浸透すると、オフィス床の減少というマイナス影響は考えられる。
―2020年の不動産市況をどうみるか。
年内はやはり弱含むのはやむを得ない。大きく落ち込むというリスクも念頭に置かなければいけない。投資意欲は新型コロナが落ち着いた後の金融市場、財政状況次第になる。だが、21年に東京五輪、30年には北海道新幹線の札幌延伸・開業といった前向きなイベントが控えるため、正常なマーケットに戻りやすい環境にあると考えている。
(聞き手・武山 勝宣)
妙摩健一郎(たえま・けんいちろう)川崎市出身。慶大法学部を卒業後、民間企業を経て2007年に日本不動産研究所に入所。本社事業部で一般鑑定、不動産コンサルティング業務に携わり、2017年6月から現職。
(北海道建設新聞2020年4月10日付2面より)