感染対策と経済のバランスを
宗谷管内は15日現在、道内で唯一、新型コロナウイルスの感染者が発生していないものの、いつ発生してもおかしくないといった空気が漂っている。そうした中、稚内建設協会会長で藤建設(本社・稚内)の藤田幸洋会長は「危機感を持ちつつも過度な反応をすべきではない」と指摘。その一方で、景気後退局面に備え、地域の安全と雇用を守る建設業の体制維持を強調する。
藤田会長は建設現場においては密集、密閉、密接のいわゆる「3密」の状況になることはほぼないとし、基本的な予防策としてうがい・手洗いの徹底のほか、不要不急の飲食店への訪問などを控えるよう呼び掛けるといった対応を取る。
裾野が広い建設業では「資材業者で感染者が出たりして、供給が止まってしまうことも怖い」とし、協力会社にも注意するよう要請している。
しかし、「注意しろと言い過ぎるとまちの経済が成り立たなくなってしまう。難しいとは思うが、基本的なことをしっかりすれば、過度な反応は無意味だ」と、ウイルス対策と経済、両方のバランスを保つべきと提起する。
新型コロナウイルス感染拡大が引き起こす景気後退は高い確率で起こると予測する。その際の経済対策については、「建設業で考えれば、国土強靱(きょうじん)化もあるし、そこそこ出てくるかと思うが、地域間や業種による格差は出てくる」と見る。そうしたインフラ関連の経済対策が打ち出された場合に、しっかりと対応できるよう体制を維持し続ければならないと訴える。
建設業がこれまで直面してきた長期低迷やアベノミクスによる回復基調、そして今回のコロナウイルス禍。藤田会長は「われわれの存在意義は地域の安全と安心を守ることと、もう一つ重要なのは地域の雇用を守ること」と建設業の存在意義を強調する。それは、地域の経済を底支えする業種としての自負があるからだ。
「これから景気後退が起こるのならば、雇用を守るのは重要な役割」とし、技術者の高齢化による人手不足や担い手の確保といった問題を抱える中でも「自分たちが地域の元気な企業なんだから、なんとかしなければならない」と語気を強める。(稚内支局・石黒俊太記者)
(北海道建設新聞2020年4月17日付12面より)