産業遺産として価値が高い旧国鉄士幌線・第三音更川橋梁[MAP↗]の補修が5月連休明けにも始まる。アーチ部基礎の補強、表面の補修をはじめ、橋梁内部への浸水を防ぐ天端の防水処理などを計画。上士幌町が工事を発注済みで、11月末に完了する予定だ。
黒石平51の大雪山国立公園内にある第三音更川橋梁は、全長71㍍のコンクリートアーチ橋として1936年に完成。河川横断部に当時国内では最大級となる32㍍の大径間アーチを採用した。橋は右岸側から10㍍、32㍍、10㍍、10㍍の4つのアーチで構成している。士幌線の廃止後、他の鉄道施設とともに町が取得し、99年に国の登録有形文化財となった。
補修は、町内のNPO法人ひがし大雪アーチ橋友の会が文化財としての保存に向けて募った1億円を財源に、寄付の窓口と資金の管理を担ってきた町が事業化。設計を2019年度に安井測量設計事務所で進め、工事は20年度の債務負担行為として2月に入札し、小寺建設・田西建設共同体が落札した。
工事は、風化や凍害により傷みが激しい表面をはじめ、岩盤が削れている32㍍のアーチ部橋脚基礎を補強し、残るアーチ部の剥離箇所などを修繕。橋梁天端は砂利を取り除き防水シートによる処理を施した後、再び砂利を敷いて、当時を再現するために軌道を敷設する。
町商工観光課では「現存する橋梁群のうち、国道273号から近くに見ることができ、美しいアーチの姿が観光客に人気の橋。補修してしっかり残したい」と話している。
(北海道建設新聞2020年4月20日付9面より)