深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り ダブルエムエンタテインメント 三田健太社長

2020年04月27日 10時00分

三田健太社長

コロナ過だからこそ活用を

 VR(仮想現実)が企業の研修や広告宣伝の手法として広がり続けている。ダブルエムエンタテインメント(本社・札幌)は、この分野で7年以上の実績を持つコンテンツ制作会社だ。新型コロナウイルス感染拡大で会合やイベントの開催が難しくなる中、デジタル技術を使った新しいコミュニケーションにはどんな可能性があるのか、三田健太社長に聞いた。

 ―コロナ感染症問題の影響はあるか。

 観光業から受注していた映像制作の仕事は大半がキャンセルになってしまった。講師やコーディネート役をやらせてもらっているVR関係のセミナー、イベントも中止が相次ぎ、こうした意味では当社も打撃を受けている。一方、感染予防で人が集まりにくくなったからこそ、インターネットを介した新人研修、社外への宣伝の方法として企業からVR活用の相談を頂く例が増えてきた。

 ―VRを使う研修とはどんなものか。

 例えば本社の会議室にいながらVRゴーグルで建設現場に立っている映像体験ができ、安全確認のポイントを視覚的に学べる。事前に360度カメラで現場を撮り、VRコンテンツとして制作するのが当社の役目だ。最近の実績では、建設重機の運転席からの映像をVR化し、周辺のどのあたりが死角になるかを運転者目線で理解できるようにした。

 VRの発展型として、実際の映像の一部分にデジタルコンテンツを表示するAR(拡張現実)も普及し始めている。例えばスマートフォンのカメラを通して作業場を見たとき、どこが何をやるためのスペースなのか説明が画面に現れる、といった使い方もできる。

 ―バーチャルな社員教育はどこまで広がるか。

 むろんVRで何もかも表現できるわけではない。例えば足場を組む作業員の視界は再現できても資材の重さ、力のかけ具合などは伝えられない。実地で学ぶことと並行して、デジタル化した方が効率的な部分はそうするという形で進むだろう。

 ―社員教育以外の用途は。

 現場の360度映像はそのまま進ちょく管理に役立つ。ほかにも、これは建設業ではないが人材採用活動での利用も増えている。学生にVRで仕事を疑似体験してもらう趣旨で、「ある社員の1日」のようなコンテンツも選択肢だ。言葉や2次元映像よりも伝わるものがあるだろう。

 ―不動産業界では物件を立体画像などでPRする例もあるようだ。

 その通りで、新築や賃貸物件の360度画像を用意するのはもはや普通になった。道内のあるハウスメーカーでは新聞折り込みチラシなどに載せた2次元コードから360度ビューにつなげて、何度でも自由に疑似内覧をしてもらうことで成約率が上がった実例がある。この社では1件の成約にかかる折り込み広告への支出が半分になった。

 ―VRの仕事は今後も増えそうだが、御社は今何人態勢か。

 意外に思われるかもしれないが、社員は実質的に私1人だ。私は営業と制作の両方をやる一方で、技術力の高いフリーランスの映像クリエイターを一定数確保していて、一部を彼らに業務委託する形を取っている。

 ―VR技術は日進月歩で発展している。顧客企業側にも専門知識が求められるのでは。

 その点を気にする必要はない。実際に当社も、技術的知識ゼロという方からのお話に何度も対応させてもらっている。VRという言葉が普及して、漠然とでも多くの人にイメージしてもらえているのがありがたい状況だ。建設業や関連産業の人にも、まずは気軽にご相談いただければと思う。(聞き手・吉村 慎司)

 三田健太(みた・けんた)1983年札幌生まれ。ITエンジニア、ユーチューバーを経て2009年7月、ダブルエムエンタテインメントを設立。

(北海道建設新聞2020年4月23日付2面より)


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