背景に人手不足 資金繰り圧迫
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、大手ゼネコンの現場を中心に工事を中断する動きが広まっているが、道内の地場ゼネコンの多くは工事継続のスタンスを崩していない。現場の大多数がまだ本格的な着工を迎えていない事情もあるが、中断した場合に専門工事業者が他の現場に移ってしまうといった人手不足の問題も背景にある。専門工事業者にしても資金繰りが厳しくなるのは目に見えるため休業は避けたいのが本音だ。(建設・行政部 大坂力、佐々木潤、旭川支社・門間康志、帯広支社・星野貴俊、釧路支社・武弓弘和記者)
政府が16日に緊急事態宣言の対象を47都道府県に拡大したことを契機に、工事の中断や作業所の閉所を決める大手ゼネコンが一気に増加。この流れは準大手、中堅にも広がっている。
一方で発注者の立場である国土交通省は、全国を対象とした緊急事態宣言後も、公共工事を継続する方針を変えていない。公共工事や河川、道路などの公物管理は社会維持の観点から継続が求められるものであり、景気を下支えするためにも公共工事の早期執行が必要だと判断している。
北海道開発局はもとより、道建設部もこれに同調。感染症へのリスク低減を呼び掛けながらも工事を推進し、受注者から申し出があった場合には、工期見直しや請負代金額の変更、一時中止などに個別に応じることで、極力工事を止めない考えだ。
道内の地場ゼネコンを見ると、宮坂建設工業(本社・帯広)は、発注者と協議が調った現場から5月6日まで原則休工とする措置を取ることにした。20日現在で全現場の7割程度が止まっている状況だという。
ただ、多くの現場が大型連休明けに本格的な着工を迎えることもあって、大多数の業者は閉所に踏み切っていないのが現状だ。道北の地場ゼネコンは「受注は公共工事が多く、発注者の意向が現場運営に大きく影響する。発注者からの指示がなければ閉所は積極的にしないのが現状。契約時の工期で工事を仕上げるのが第一との考えもある」と指摘する。
また「現場を動かすことで作業員の働く場所を確保する面もある」と下請け企業への配慮も示す。別の道北ゼネコンも「工事を止めれば協力会社や専門工事業者、作業員が他の現場に流れ、人手不足がより深刻になる。地域につなぎ止めるためにも工事は続けたい」と人材流出を気にかける。休業補償でつなぎ止める手段もあるが、費用が莫大(ばくだい)になるのが難点。宮坂建設工業でも補償するのは見送ったが「再び現場が動き出したときに戻って来てもらえないリスクもある」(高道伸社長室長)と不安を明かす。
現場が閉所になった札幌市内の専門工事業者は、実際、作業員の休業期間をどう補償するかで頭を悩ませている。なるべく作業員に有休消化を促すなどして対処する考えだという。
建設産業専門団体北海道地区連合会の熊谷誠一会長は「半月休むと、日給月給制や日給制だと作業員の給料は半額に。日給制の場合でも企業の資金繰りが圧迫される」と指摘。多くの企業では法人税の納税時期と重なるため「着工期の現場が半月ずれることになると資金繰りに窮するのではないか」と危惧している。
(北海道建設新聞2020年4月27日付1面より)