効果的な経済政策継続を
■熟慮を重ねたIR誘致の判断
就任後、初めて本道の将来を左右する大きな決断となったのがIRの誘致だ。鈴木知事は就任時から一貫して「国や他府県の動向などを見極め、適時適切に判断する」と慎重な姿勢を見せ、判断を先送りしてきた。大阪や横浜など他の地域が名乗りを上げる中、就任から7カ月余りが経過した11月29日、誘致の見送りを表明。候補地である苫小牧市植苗地区の環境評価が区域整備計画の申請期間に間に合わないことを考慮した。道議会議員からは「希少生物の存在は初めから十分に想定されたのではないか」と準備不足が誘致見送りにつながったとする指摘もある。
鈴木知事は、今回の誘致を見送ったものの、7年後に追加申請する可能性も見据えて準備を続けるとしている。しかし、20年度予算にIR関連費を計上せず、今後が見通せない状態だ。誘致に向けてどこまで本気で進めていくのか、明確な道を示す必要がある。
■コロナ対策でリーダーシップ
そして、いま道内経済を最も揺るがしているのが新型コロナウイルス感染症の拡大だ。IR誘致の判断が慎重だった一方で、新型コロナウイルス感染症対策は素早かった。2月下旬に全国に先駆けて「緊急事態宣言」や一斉休校を決断し、リーダーシップを発揮。緊急事態宣言の2週目には専門家の意見を踏まえ、自粛条件を緩和するなど柔軟性も見せた。国の専門家会議からも爆発的な感染の防止に一定の役割を果たしたと評価された。
一方、自粛が続く道内経済は大きな打撃を受けている。道の推計によると、6月まで影響が続いた場合、観光産業だけで3680億円の損失が見込まれている。道の中小・小規模企業向け相談窓口には、緊急事態宣言後に相談が急増し、12日までに724件の相談が寄せられた。中小企業総合振興資金の低利融資制度の貸付は500件程度、90億円近くにも上る。さらに16日には国が全国を対象に緊急事態宣言を発令。大手ゼネコンが現場を閉所するなど建設業界にも影響がじわじわと広がる。
経済界からは「道の緊急事態宣言で大きな影響があったのは確か。終了後は社会経済活動との両立を目指していたので少し緩和してきたかのように見えた。しかし、再びの宣言で先行きが見えない状態になった」と危機感をあらわにする声が上がる。
一度は感染爆発を防いだものの、第2波の危機に直面する本道。収束はいまだ見えず、長期戦が予想されている。23日には第2弾の経済対策を公表したが、効果的な対策の継続が重要だ。鈴木知事の全国に先駆けて決断を下す姿は日本中から注目を集めた。いかに本道経済をV字回復へ導くのか、鈴木知事の決断力と実行力に期待がかかる。
(北海道建設新聞2020年4月27日付1面より)