未来への采配 鈴木知事・就任1年

 鈴木直道知事が23日で就任1年を迎えた。カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致、世界的イベントの開催、そして新型コロナウイルスという新たな脅威にどう立ち向かうのか。道民は16年ぶりに交代した若い知事のリーダーシップを見つめてきた。いま、かつてない危機に直面している北海道。就任から1年を振り返るとともに、今後の期待をまとめた。

未来への采配 鈴木知事・就任1年(下)

2020年05月06日 16時00分

道財政健全化の行方注視

就任後、各地を飛び回って道政課題を確認した

 昨年秋ごろから鈴木直道知事は、2030年に向けた〝ロードマップ〟をたびたび持ち出すようになった。30年度末の北海道新幹線札幌開業までに予定される主要なプロジェクトを端的に示して可視化することで、道民と認識を共有することが狙い。

 ロードマップには、東京五輪、アドベンチャートラベルワールドサミット、北海道ボールパーク開業など華々しいプロジェクトが並び、鈴木知事はこうした好機を一つずつ結実させることで「成功の連鎖を生み出していく」と宣言。これまで以上に時間軸を意識した政策を打つ考えを示した。

■道財政深刻化、再生に向けて

 しかし、こうした意欲的な取り組み、カジノを含む統合型リゾート(IR)など話題性の高い施策はメディアにも頻繁に取り上げられるが、その陰で一筋縄ではいかない根深い課題が多くある。

 中でも深刻化するのが建設投資にも影響を及ぼしかねない道財政だ。公共事業は地方債を発行して執行し、長期間で償還するが、自治体の収入に対する地方債返済額(公債費)の大きさを表した「実質公債費比率」、いわゆる借金の比率は20年度で20.8%を見込む。

 18%を超えると新規地方債発行に国の許可が必要となるが、これは都道府県レベルでは北海道のみで、全国最悪の状況だ。現在の予想では26年度に24.1%まで上昇し、早期健全化基準の25%にぐっと近づく。

 鈴木知事は、知事選出馬を決めた当初から道財政に警鐘を鳴らしていた。そして夕張市の財政再生に道筋をつけた実績を生かして、建て直しを決意した。20年度予算案の記者会見でも「改善は急務」と指摘。ただ、多くの道民に危機的状態が伝わっていないことを反省し、まずは「厳しい状況を道民と共有することが大事だ」と強調した。

 解決策はまだ示していない。ただ、必要事業に予算を重点配分することで政策にめりはりを付ける考えを述べながらも、新規道債発行の抑制という言葉もちらつかせる。一方で、激甚化する自然災害からの安全確保、本道を世界にPRするために交通・物流ネットワークなどインフラ整備の重要性も語り、健全化の方向性はつかめない。

■新たな財源獲得の挑戦は続く

 鈴木知事は支出抑制以上に、新たな財源確保に熱心だ。公約にも「攻めの道政、行動する道政」を掲げ、企業版ふるさと納税の活用や北海道応援団会議創設、自らのトップセールスを展開してきた。実質公債費比率でいえば、分母に当たる収入拡大に取り組もうとする姿がうかがえる。

 取り組みはまだ途上。止まらない人口減少と少子高齢化、新型コロナウイルスによる経済縮小と逆風が吹き荒れる中、いかに新財源を獲得するかにも本道の未来が懸かる。

 知事1年目の成果について道議会議員からは「ほぼ前知事からの流れを踏襲したものばかり」との声も聞かれる。硬直化する財政で自分の政治カラーが出せないもどかしささえ感じる。

 いま、新型コロナウイルスの終息こそが最優先課題だ。ただ、あらゆる道政課題も時期を逸することなく進めなければ、本当の復活はない。就任2年目の采配には大きな期待が掛かっている。

(この連載は建設・行政部の仲道梨花、佐々木潤記者が担当しました)

(北海道建設新聞2020年4月30日付1面より)


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