北海道胆振東部地震で宅地や道路が壊滅的な被害を受けた札幌市清田区里塚地区で、住民や市、工事関係者の努力によって住宅再建が本格化している。災害発生から約1年半足らずで、補修や建て替えの意向がある住宅のうち約3割が既に工事に着手。陥没した地盤の改良と併せて、住宅再建など複雑に重複する現場を一体的に調整する手法が早期復旧の成果を生み出し始めている。
同地区では地震により、大規模な土砂流出が発生。地盤の流動化を抑制する対策工を早期に確立し、宅地と道路の地盤改良を2020年3月までに完了させている。20年度は暗渠管の布設や公園の地盤改良などインフラの復旧が順調だ。
住宅が被災し、罹災(りさい)証明を提出した116戸のうち、持ち家は106件を占める。一時は約半数が地元を離れたが、対策工の検討やインフラの復旧が進むにつれて、約9割に上る92件(4月27日現在)が住宅を再建する意向を示した。
持ち家は補修が20件、建て替えが8件の計28件で着工。このうち補修17件、建て替え1件がそれぞれ完了した。早期に施工できたのは、被災建物の土台に薬液注入する工法を採用したため、効率的な施工が可能になったからだ。
現場では住宅の補修などと並行し、地盤改良や上下水道などの復旧が進む。工事が重複する中、札幌市の現地事務所、施工業者やハウスメーカーが住民との調整役を担い、円滑な施工につなげている。
市建設局市街地復旧推進室の須志田健清田区里塚地区市街地復旧推進担当課長は「地域のコミュニティー再生に向け、対策工の検討や工事に迅速に取り組んできた。多くの人が地域に残ってもらえるのは、その成果が見える」と話している。