「デジタルツイン」で働き方に新たな可能性 

2020年05月25日 15時00分

現実世界を仮想空間で再構築 設備メンテで活用も

デジタルツインを活用した
ヘルシンキ市のスマートシティー案イメージ

 建設技術者の働き方改革に向けて、「デジタルツイン」がキーワードの一つに浮上している。現実世界の情報をリアルタイムに収集しながら仮想空間へ送り、高度にシミュレーションする技術。IoTの普及とともに国内外で注目され、海外ではクラウドサービスを提供する企業がある。国内はNTTドコモやコマツ、東洋エンジニアリングなどが実用化を急いでいる。

 デジタルツインは現実世界に存在する製品や製造設備の情報、オペレーションデータなどをリアルタイムに収集しながら仮想世界に送り、現実世界と全く同じ状態や状況を仮想世界で再構築。仮想モデルを用い、高度なシミュレーションなどをする。

 技術の確立には大量のデータが必須で、近年のIoTや人工知能(AI)の進化が弾みとなった。今後は膨大なデータを送信できる5Gの普及が鍵を握るといわれている。

 設備の修理や交換などメンテナンスの場面で導入すれば、サイバー空間上の仮想モデルを生かし、現場へ出向く前に故障原因を突き止められる。このため、現場従事者の働き方改革や技能継承の救世主として実用化が期待されている。

 NTTドコモと米国シンメトリー社は、デジタルツインを活用した建設業界の次世代の働き方に向けた実証実験を進めている。ドローンやレーザースキャナーで取得した大容量の点群データを5Gでクラウドに送り、データ処理しながら実世界の空間をサイバー空間上に再現する。

 測量技師は現場に行かなくても、再現されたサイバー空間上で何度でも調査・測量ができ、移動時間や再測量などの業務を大幅に削減可能。技術継承や労働力不足で悩む土木・建築業界の課題解決に向け、技術を確立する考えだ。

 コマツは現場のデジタルツインを広めたい考えだ。ドローンと3D点群生成システムによるスマートコンストラクションで仮想現場をつくり出し、現場と事務所で情報を共有。近い将来、現場代理人は施工場所へ行かなくても、テレワークなどで作業者に指示や確認ができると考えている。

 プラント会社の東洋エンジニアリングは、DX―PLANTと名付けたプラント稼働に関するデジタルツイン技術を提供している。近ごろはNTT西日本100%子会社のジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW、本社・大阪)に出資した。

 JIWはドローンを使った鉄塔や橋梁などのインフラ点検サービスを提供していて、出資によって診断の自動化など新技術の開発を目指す。JIWにはこのほか東京電力パワーグリッドやNTTデータなど6社が資本参加した。

 海外では、米国ベントレーシステムズ社がインフラの設計・建設・運用に関するデジタルツインのクラウドサービス「iTwin」を提供している。エンジニアリング会社はインフラの計画や資産に関するデジタルツインの作成、視覚化、分析が可能になる。

 フィンランドの首都ヘルシンキ市は、ベントレー社のリアリティーモデリングソフトウエアを活用し、スマートシティー案のイメージを3Dで生成。内部サービスとプロセスの改善につなげた。

(北海道建設新聞2020年5月22日付3面より)


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