インバウンド需要の動向注視
4月1日付で奥村組札幌支店長に就任した。土木に関してはこれまでのJRなどの工事のほか、高速道路の大規模工事や官庁工事の受注も目指す。建築では新型コロナウイルス感染拡大に伴うインバウンド関係の需要低迷を懸念しつつ、動向を注意深く見守っていく構えだ。(建設・行政部 大坂力記者)
―就任の抱負を。
入社して東京勤務が長く北海道は初めて。札幌支店には北海道出身者や北海道勤務の経験が長い社員がいる。そういう人たちの知恵や経験を生かしながら、私のような道外の人間の経験を融合させ、多様な人が連携し合う職場環境づくりを目指したい。
そして、各個人が目的意識を持ち自律的に動いていける組織を形成し、売上高や企業価値を高めていきたい。
―事業環境として北海道をどう見ているか。
土木についてはJRなどの鉄道系の工事実績が多く、現在は北海道新幹線や日本製鉄の製鉄所内の工事をメインに施工している。今後は加えて官庁工事や道路関係工事も受注していきたい。例えば高速道路の4車線化やリニューアル工事がこれから出件されると思うが一つ一つ採算性を考慮しながら挑戦していきたい。官庁工事では総合評価が鍵になるので、価格競争力と技術提案力の両面を伸ばしていきたい。
建築については、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で全体的な建設投資が低迷し、受注競争が激しくなることが懸念される。特にインバウンド関係の需要には不透明感があり、今後の情勢を注視していきたい。
弊社の経営理念は堅実経営と誠実施工。どのような状況においても、誠実施工によりお客さまに良い品質の成果物を提供し、信頼を得続けていくことが一番重要だ。
―支店の営業戦略は。
弊社は、2019年4月に2030年に向けたビジョンと21年度までの中期経営計画を策定した。その中で3つの基本方針を打ち出している。1つ目は企業価値の向上。強い組織を作り売上高や技術力を伸ばし企業価値を向上させる。2つ目は事業領域の拡大。北海道では投資開発事業本部が昨年から石狩バイオマス発電事業に取り組んでおり、19年10月に発電所の建設工事に着手、22年8月の運転開始を目指している。札幌支店も連携し全面的にバックアップしたい。最後の1つは人的資源の活用。働き方改革などにより、人を大切にする、社員が誇れる企業にしていく。札幌支店もこの3本柱を軸とした全社的な方針に則り取り組んでいく。
―新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みは。
消毒液の設置やマスク着用はもとより、時差通勤やテレワークを奨励している。また、緊急事態宣言の対象地域のうち、北海道を含む特定警戒都道府県で施工中の工事については5月6日までは原則中断していたが、現在は発注者や協力業者と協議し、工事を再開している。
―働き方改革に向けては。
本年度は、工事所の4週7閉所を目標とする。1年に1日ずつ目標を引き上げている。労働時間を短くするよう指示するだけでは難しく、ICTなどの新技術を活用した生産性向上や今までの業務の無駄を削る業務改善に支店全体で取り組んでいく必要性を感じている。
内勤者に比べ、工事所勤務者は工期の制約などから、どうしても労働時間が長くなる傾向にある。内勤部門が工事所をサポートすることで内外勤の差を縮めていく工夫も今後必要だ。
磯上晃一(いそがみ・こういち)1964年1月11日生まれ、滋賀県出身。87年3月に京大工学部卒業後、奥村組に入社。東日本支社で土木技術部長や東北支店土木第2部長、東京土木第2部長を経て20年4月から現職。
(北海道建設新聞2020年5月27日付1面より)