人材育成へ会社の垣根越えたネットワーク構築
会社の垣根を越えた技術者ネットワークで人材定着へ―。旭川建設業協会は2020年度から、会員各社に入社した高校普通科卒の技術職志望者を共同で教育する。自身も4月から建設業界に復帰した元旭川工高土木科教諭の宮川淳氏が講師を務める。

建協の新たな人材育成の活動を説明する宮川氏
会員各社には近年の業界アピールと幅広い人材確保が実り、普通科や商業科、社会人経験者の入職につながっている。次のステップとして6月3―5日の3日間「土木技術者入門講座」を開く。
参加対象は土木科卒業以外で19、20年度に入社した社員。現場で必要な知識の習得が目的だ。初回となる今回は、数学や幾何学の基礎を講義と演習で学び、勾配や道路断面図の応用に進むカリキュラムを組む。
カリキュラムもテキストも講師の宮川氏が自作。宮川氏は3月に教職を定年退職し、4月から花本建設(旭川)に入りHCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)推進室長を務めている。同部署は、同社の外国人技術者や新入社員の教育など人間を財産と捉えた各業務を担い、今回の講座もその一環となる。
建設業界から教育現場に入り、約20年ぶりに建設業界に戻った経験を存分に生かす。前職では「他の学校に負けない技術者づくり」が目標だったが、今回は「地域の土木技術者を育てる」ことが命題だ。担い手育成は「自社だけでいいという問題ではない。地方の建設会社で技術者として働けば、どの会社にいても、いつか、どこかの現場で会う仲間」と強調する。
特に地元の技術系学科卒でない技術職志望者は横のつながりがないため、助け合える仲間やネットワークが醸成できないか、講座を業界定着の足掛かりにする工夫に励む。「やったことがないから質問もできない」といった孤立や学びの欠如も、興味とコミュニケーション能力を引き出し防ぎたい考え。興味が学ぶ姿勢を生み、ひいては「間違いに気付く、違和感を持てる感覚を備えて現場に臨んでほしい」と技術者の卵たちに期待する。
開催後は、参加者と所属会社へアンケートを実施。需要の把握や課題の洗い出しに利用し、次回につなげる。将来的には、回を重ねて「(参加者が)勉強し定着して先輩となり、次に入ってくる普通科卒の後輩に指導してほしい」と述べ、その土壌づくりに挑む。
(北海道建設新聞2020年5月28日付12面より)