明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦

 建設業で30代、40代の経営者が続々と登場している。

 足元では少子高齢化、ITの発展で社会が大きく変化する中、コロナショックの発生で経済は混乱のさなかにある。不透明感を増す新時代を担う経営者たちは、これまでどう歩み、これから何を目指すのか。

 北海道建設新聞は、北海道経営未来塾(長内順一塾長)の協力を得て、同塾で学んだ建設業の若手経営者7人を取材した。連載で紹介する。

明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦(7)渡辺組 渡辺勇喜副社長

2020年06月16日 12時00分

建設業へ若者呼び込む オホーツクに眠る可能性引き出す

渡辺勇喜副社長(37)

 土木・建築だけではなく、食品や飲食、ホテルなどグループとして先々代から多角化経営に取り組むのは「その事業が地域のためになるかどうかだ。新たな雇用を生み出し、地域発展に協力したいとの思いがある」。昭和、平成、令和と時代とともに取り巻く経営環境が変わろうとも、ぶれない判断軸があると語る。

 1982年、遠軽町に生まれ、札幌の北嶺中・高を卒業後、北大経済学部に進学した。2005年、全日本空輸(ANA)に入社。本社でマネジャーという立場からマーケティングの責任者として、インバウンド誘客やモバイルアプリ開発などに携わった。

 「全国、全世界を飛び回り、他の地域を知れば知るほど北海道の魅力が明確になった」と振り返る。「畑違いとは思うものの、IT化やICT化、働き方改革などはどの業界でも進んでいる」。航空会社で培ったマーケティングやIT化といった知識と経験を建設業に生かしている。

 経営をバトンタッチする時期に差し掛かったことから、18年に渡辺組に入社。インフラを守り、地域の生活を支えるのが建設業の重要な役割だと考える。地域に根付いて信頼され、その信頼を地域にお返しする循環の歴史を痛感しているという。「信頼を得ることが一番難しい。経営姿勢や努力、振る舞いといった長い積み重ねがあってこそ生まれる」と言い切る。

 これからは地域での建設業の役割を拡大解釈しなければいけない時代に入ると感じている。モノを造るだけではなく、SDGsなどを通じて地域や北海道を持続的に発展させる方策が欠かせない。「自分たちの会社だけが良くなるのではなく、地域を守りながら全体が良くなるよう、どういう役割を担うのかを明確にしなければならない」と力を込める。

 今後はグループの一体的経営を見据え、「横の連携を強化することで、相乗効果を生み出し、経営の安定化を図りたい」と展望する。

 毎年、インターンシップで高校生や大学生を受け入れている。「全道一楽しいインターンシップ」をコンセプトに掲げ、1週間の期間内に建築・土木現場だけではなく、グループ各社も回る。

 「最も強化して取り組んでいる部分。若い人たちに〝建設業って楽しいんだな〟と思ってもらえる取り組みや情報発信を、もっと進めなければならない」。人手不足や高齢化といった大きな課題を抱える業界だけに、どのように見られているのかを考えることが重要になる。「この会社は面白い」「仕事って楽しい」と思ってもらえることが目指す姿だ。

 社を構えるオホーツク管内は最も可能性のあるエリアだと捉えている。「自然や景観、食などの観光資源がたくさんあるが、伸びしろを伸ばすためには付加価値を高めることも必要」。管内各地区の若い人たちと情報交換しながらオホーツクを盛り上げる。

(北見支社・板垣達也)

渡辺組
 本社・遠軽町南町3丁目、創業1906年、設立1959年、資本金5000万円、社員数128人。

渡辺勇喜(わたなべ・ゆうき)
 1982年7月30日生まれ、遠軽町出身。2018年に取締役社長室長、19年に代表取締役副社長に就任。

(北海道建設新聞2020年6月9日付3面より)


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