明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦

 建設業で30代、40代の経営者が続々と登場している。

 足元では少子高齢化、ITの発展で社会が大きく変化する中、コロナショックの発生で経済は混乱のさなかにある。不透明感を増す新時代を担う経営者たちは、これまでどう歩み、これから何を目指すのか。

 北海道建設新聞は、北海道経営未来塾(長内順一塾長)の協力を得て、同塾で学んだ建設業の若手経営者7人を取材した。連載で紹介する。

連載「明日を見いだす 建設業若手経営者の挑戦」を終えて

2020年06月17日 12時00分

本道業界希望の光

 少し荒っぽいイメージもあった「地元建設会社の重役」像と、目の前にいる人物が重ならない―。今回の連載で7人の経営者に接した取材班は、共通してこんな印象を持った。30代から40代前半の彼らは人当たりの柔らかい、勉強熱心な紳士たちだった。

広い視野 勉強熱心 未来を模索する姿勢

 全員が地域の有力企業の後継ぎかその予定者だ。今に至るまでのストーリーはそれぞれだが、共通するのは建設業界内だけでなく広く経済や社会に目を向けていることだろう。秋津道路の渡辺慶人社長は働きながら学んでMBA(経営学修士)を取得し、内池建設の内池秀敏社長は自社に入ってから中小企業診断士資格を取った。

 業界外の感覚を自らのキャリアの中で身に付けているのが、航空会社に勤めていた渡辺組の渡辺勇喜副社長や、人材コンサルタント会社にいた白崎建設の白崎喬大社長室長だ。ミュージシャンという異色の経歴を持つ西條産業の西條公敏常務は今、MBAに向け大学院で勉強を続けている。

 イトイ産業の菅原大介社長もまた、地元経済全体を視野にさまざまな事業育成を提唱する。小鍛冶組の小鍛冶洋介社長は社長就任時、東京の大手会計事務所にいた公認会計士を専務としてスカウト。財務を筆頭に、経営の透明化を進めている。取材からは、これからの建設業の在り方を求めて、それぞれに挑戦する姿が浮かび上がった。

 背景には時代の変化がある。かつて建設業界が潤った高度経済成長期もバブル景気も、1970年代後半以降に生まれた彼らにとっては過去のもの。バブル後の「失われた20年」の中、大手企業の破綻を目にしながら社会に出た世代でもあり、家業の看板にあぐらをかくことの危険を感覚的に知っている。人口が減り、さらに変化が速くなる社会で、これまでの経営が通じる保証はない。それゆえ彼らは明日を模索し、学ぼうとする。

 7人は全員、若手経営者向け勉強会の北海道経営未来塾に通った「同門」だ。元ニトリ特別顧問の長内順一氏が塾長を務め、北海道商工会議所連合会などでつくる実行委員会が2016年から開講している。未来塾は道内外の多くの著名経営者と懇談し、経営手法をじかに学べるのが特長で、道内に数ある経営者向け勉強会の中でも別格の存在感を示してきた。

 長内塾長によれば、このところ建設業関連からの参加応募が増えているという。ことしは5期生のメンバー37人が決まったが、うち約3分の1が建設・不動産関係からだ。建設業界の若手が自らの成長を望んでいる表れにも見える。

 今回の連載企画は未来塾の協力で、中堅建設会社の若手経営者を紹介した。彼らの挑戦が、本道建設業界にとって希望の一つとなることは間違いない。

(経済産業部 吉村慎司)

(北海道建設新聞2020年6月10日付3面より)


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