運営面で年度内実施厳しく
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、8日以降に実施する予定だった2020年度前期の技能検定57職種が中止となった。道内では、塗装や路面標示施工など44職種で1400―1500人が申し込んでいた。厚生労働省は後期との同時開催を含め年度内実施の可能性を探っているが、既に後期のスケジュールが決まっており、日程調整や新たな試験場の確保など運営面から見て現実的には厳しい状況だ。建設関連の技能団体からも、資格取得が今後の入札競争に影響するため年度内の開催を希望しつつも1年延期は致し方ないとの声が聞かれる。(建設・行政部 大坂力、経済産業部 小山内未央記者)
厚労省は5月22日、都道府県の職業能力開発協会が実施する前期技能検定の中止を発表。57職種が対象で、このうち建設関係は16職種あったが、大半は後期技能検定の職種に含まれていない。
道内の前期受験者は、コロナ禍を受けて一定数が受験を避けたと想定され、1400―1500人と例年より500人程度少なかった。前期の実技試験と合わせて開催する予定だった技能五輪北海道大会については、7月上旬に開き、全国大会の出場選手を決める予定だ。
北海道道路標示・標示業協会の伊藤勲会長は、前期の中止について「人手不足や若い職人の育成に向けてどうしても必要なもの。1年延期されると困る」と話す。路面標示施工技能士は主任技術者の資格となるため、資格取得の機会がなくなることで21年度工事の入札競争に影響することを危惧する。
試験は毎年7―9月に実施しているが、路面標示工事の春先の繁忙期を過ぎたころで最適のタイミングだった。一方、加熱ペイントマシンマーカー作業の検定は屋外のため降雪時期にはできないことから、年度後半の実施は難しいとみている。
北海道塗装組合連合会の曽山和則会長は「若手は、最低でも2級を合格して職人と認識される。1級合格を目指して勉強してきた者もいる」と、受験者のモチベーションの低下を心配する。
開催が決まれば検定委員の送り出しなど協力体制を整える構えだが「3密を回避するために会場のスペースを確保するなど難しい面がある」。運営面でハードルが高いことも認識し中止もやむを得ないとする立ち位置だ。
厚労省は、後期との同時開催を含め年度後半で実施可能かを見極めている最中だ。ただ後期については既にスケジュールや会場が決定済み。実技試験は12月4日―21年2月14日の期間で、学科試験は同年の1月24日、同31日、2月3日、同7日のうちで開かれる予定だ。
開催に当たっては感染予防策を万全にしなければならない上に、前期の検定も追加することになれば日程調整、新たな試験場や検定委員の確保など準備が膨大になるのは目に見えている。
北海道職業能力開発協会は、技能士の資格がなければ登録基幹技能者へのステップアップが図れないなどの理由で開催を求める声があることを承知した上で、運営上の課題を考えると「協会のスタンスとしては実質的に年度後半での開催は無理だ」としている。
(北海道建設新聞2020年6月17日付1面より)