岐路に立つ大学 生き残りをかけて

 道内私立大学にとって学生数をいかに確保するかは頭を抱える課題だ。打開策として札幌市内地下鉄駅周辺へのキャンパス移転や系列高の集約に活路を見いだし、大規模な施設整備に踏み切るケースが相次いでいる。選ばれる大学づくりに向けた現状を追った。(2回連載します)

岐路に立つ大学 生き残りをかけて(下)系列校の集約図る

2020年06月23日 12時00分

 系列高を同一キャンパスに集約する大学では、高校入学から就職までの一貫した教育プログラムと将来設計の提供を武器に、運営校全体で安定した学生確保に臨む。

道文教大キャンパス内で建設が進む仮称・道文教大付属高

高校生が大学施設活用 道科学大

 北海道科学大は4月、札幌市豊平区中の島の北海道科学大高を手稲区の前田キャンパスに移転すると発表した。同大の担当者は「専門性を有する大学を高校生のうちに間近で体験できる」とし、高大連携による教育内容充実や卒業後の道科学大進学を期待している。

 工学部が中心の道科学大は、不足する看護師など医療関係のニーズを受けて2014年度に看護、理学療法、診療放射線の新3学科などで構成する保健医療学部を設置。15年度には旧道薬科大を前田キャンパスへ集約し、18年度に薬学部として統合した。「学部をまたいだ教育・研究を可能にし、医工連携で他大学と差別化を図る」と狙いを説明する。

 これが受験生の関心を集め、20年度入学者の一般・センター試験利用入試志願者数は前年度比3割増の約9000人に拡大。医療系学部により、女子学生獲得にもつながっている。

 次なる改革は23年4月の道科学大高集約だ。同大の担当者は「大学のさまざまな資源を高校生が日常的に活用し、〝3+4年間〟の一体型教育の実現を目指す」と集約の理由を明かす。老朽化が進む高校校舎への対応、施設維持コスト削減にもつなげる考えだ。

恵庭や千歳の生徒確保 道文教大

 北海道文教大恵庭キャンパスでは付属校として集約する道文教大明清高の新校舎建設が進む。競合校の多い札幌を離れ、21年4月に新天地恵庭で再出発する。

 同高の佐々木淑子校長は「母体となる大学の学生確保に寄与するのも付属校の役目」と強調する。高校のうちから各学科に沿った教育プログラムを展開し、高校・大学と連結した学生確保を目指す。

 札幌市南区に位置する明清高は人口減少に加え、交通利便性、近隣競合校の存在などで生徒確保に苦慮。佐々木校長は「ここ5年の入学生数は定員160人に対し、5割前後で推移していた」と明かす。

 この状況を改善するため、恵庭キャンパスへの移転を決断。「大学がある恵庭市、若年者人口が伸びている千歳市に私立高はなく、今こそ求められていると感じた」と説明する。

 手応えはあった。移転を1年後に控えた20年度の入学者数は定員の9割に上る144人と、近年にない伸びを見せた。このうち入学者の半数は恵庭・千歳など近隣在住の生徒だった。

 道文教大は看護、理学療法をはじめとした人気の医療系学科を除き、一部の学科で定員割れとなっている。このため毎年3、4割の卒業生を送り、下支えする考えだ。集約を生かした高大の人的交流、施設共有なども推進し、高校・大学・就職へとつながる道筋を見せる。

 18歳人口の減少が続く中、慢性的な定員割れとなる道内私大は後を絶たない。一方、時代に沿った新学科設置や交通利便性を求めての移転といったキャンパス改革により、学生確保につなげたケースもある。

 少子化で市場が縮小すれば倒産の危機を迎える。厳しい経営が続く大学は選択の岐路に直面している。

(この連載は経済産業部の武山勝宣、宮崎嵩大記者が担当しました)

(北海道建設新聞2020年6月17日付2面より)


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