販売価格の引き上げを
札幌は民間企業による設備投資需要が道内の3分の1を占め、生コン市場への影響が大きい。市街地再開発や北海道新幹線札幌延伸関連の工事を背景に堅調さが見込まれる。一方、新型コロナウイルスを要因とした経済停滞で、投資案件の見直しや中止が危惧される。5月の総会で札幌生コンクリート協同組合理事長に就いた成田真一氏に抱負や対応策を聞いた。
―新理事長の抱負を。
まず4期8年務めた岡本繁美前理事長に敬意を表したい。2012年の共同販売事業の再開にリーダーシップを発揮し、一時1m³当たり5500円まで下落するなど崩壊状態だった市場の立て直しに尽力した。人材確保に向け、工場の週休2日制を導入したことも大きい。私自身、重責を感じていて、微力だが頑張りたい。
―優先課題は。
販売価格の引き上げだ。業界ではセメントや骨材など材料の価格が上がっているほか、ミキサー車の運賃、人件費が軒並み上昇傾向にあり、各社が疲弊している。このため全道各地で是正が広がり、地域にとって多少の差はあるものの、積算価格は1万8000円強ほどをつけている。
札幌はビルやマンション建設など需要が堅調だったほか、員外工場との調整もあり、値上げの議論は平行線にあった。だが現状の積算価格は1万3300円と北海道で一番安い。もはや値上げは避けられない。工場が製品を安定供給したり、企業が持続的に発展するために販売価格の是正は〝待ったなし〟だと考える。
―札幌の生コン需要は。
19年度は(員外合わせ)約103万m³で前年度より7%ほど伸びた。20年度は横ばいの105万5000m³を想定する。新さっぽろ駅周辺地区やJR苗穂駅前の再開発、北海道新幹線札幌延伸に関連した工事需要を期待している。
今のところ、観光業や飲食業のように新型コロナウイルスの影響は出ていないが、今後は工事の先延ばしや喪失によって影響を被りそうだ。ある大手生コン会社の首脳は札幌の生コン需要が60万m³まで沈む可能性を指摘していて、先行きは非常に厳しくなるかもしれない。
―需要減少への手だては。
構造改善の必要性は高まってくる。ここ5年余り札幌の出荷量は100万m³ほどで推移してきたため、構造改善の議論は出なかった。しかし今後は、他地域のように工場の休止や共同操業を検討しなければならない。並行して、員外企業との協調も重要になるだろう。
―担い手について。
どこの工場も少人数で稼働し、人材を中長期的な視点から確保することへの意識が低かった。結果、業界は世代が偏り、50歳以上の中高年が大半となっている。将来を考えたとき、担い手の確保は課題の一つといえる。
企業側が欲しいからといって、すぐに若い人材を確保できるものではない。高校や大学との恒常的な付き合いが求められる。札幌は地方より人口が多く、新卒採用のチャンスは大きいが、ITや流通、建設など企業が多岐にわたるため競争相手も多い。
以前、札幌工高がコンクリート甲子園に出場するとき、札幌協組が生徒に技術指導したことがあった。生コン業界を身近に感じてもらえるような学生や生徒との接点の機会を設けたい。従事者の待遇を改善し、希望と誇りを持ってもらうのは業界幹部の責任だ。
(聞き手・佐藤 匡聡)
成田真一(なりた・しんいち)1954年生まれ、函館市出身。77年上智大卒、秩父セメント(現・太平洋セメント)入社。2008年函館小野田レミコン(現・北海道太平洋生コン)社長に就き、現在は顧問。10年から北海道生コンクリート工業組合の理事長を務める。
(北海道建設新聞2020年6月19日付2面より)